2022.12.06 (火)

探究学習のテーマはどう決める?
選び方のポイントとテーマ4例。

探求学習は、2022年度から高校でスタートした「総合的な探求の時間」などで実施されている新しい学び方です。
新学習指導要領に基づいて、ICTなどを活用しながら生徒が自ら課題を設定して、主体的に解決に取り組みます。
探究学習は、教科を横断した学びです。だからこそ、テーマ選びが重要となります。
テーマになりえる題材は、たとえば「生きるとは?」「学ぶとは?」といった哲学的な切り口から、「地域産業をPRする」といったビジネス体験、あるいは社会や地域の課題解決まで、幅広く存在します。
この記事では探究学習の基本的な考え方やテーマ選びのポイント、探究学習を進める際の疑問点などをわかりやすく解説します。

探究学習とは?【わかりやすく解説】

探求学習イメージ

探究学習とは、生徒自らがテーマ(課題)を設定し、解決に向けて主体的に学びをすすめることです。その狙いは、生徒の思考力や判断力、表現力などの育成にあります。

ここから、探究学習の基本的な考え方を、わかりやすくおさらいしましょう。

探究学習とは、「正解のない問いを作る」こと。

探究学習とは、自ら問いを作りそれに対する答えを探していく手法です。「正解のない問いを作ること」と言い換えることもできます。

探究学習では、知識やスキルを積み上げて、正解を見出す従来の学習とは異なり、教科の枠を超えて総合的・横断的な能力を養います。

生徒の探究心を軸に学習を進みます。自分のこととして考えられるテーマほど真剣に取り組むことができるため、テーマの設定は非常に重要になってきます。

探究学習の背景:生きる力の育成

探究学習は新学習指導要綱で盛り込まれたキーワードです。

探究学習の目的は、未来予測が容易ではない著しい変化の時代に「生きる力を育成するため」です。

授探求学習の意義とは、
「答えのない課題について主体的に考え、問題を探究する心身の育成」
にあるといえるでしょう。

探究学習の背景:大学入試制度の改革

2021年度より、大学入試の試験方法が、大学入学共通テストに変わりました。従来のセンター試験と比べて、大学入学共通テストで重視しているのは次の点です。

  • ①知識・技能の確実な習得知識・技能の確実な習得
  • ②知識・技能をもとにした思考力・判断力・表現力
  • ③主体性をもって、さまざまな人々と協働して学ぶ態度

従来のセンター試験が重視していた①に加えて、②③が追加されています。
すなわち、大学入試においても、「主体的な学び」、「協働的な学び」、「探求的な学び」が、全面的に押し出され、求められるようになったのです。

「総合的な学習の時間」と「総合的な探究の時間」の違いは、主体性

「総合的な学習の時間」とは、旧来の学習指導要領にもあった文言です。2022年度現在、小中学校では「総合的な学習の時間」として、探求学習を実施しています。

一方、2022年度から高等学校でスタートした「総合的な探究の時間」は、新学習指導要領を受けて新しく始まった学び方です。
文部省が定義する「総合的な学習の時間」と「総合的な探究の時間」を比較すると、「~探求の時間」のほうが、より主体性を全面に押し出した学びを提唱していることがわかります。

探究学習、テーマ設定のポイント

探求学習において、テーマの設定は重要です。テーマによって、探究学習から得られる効果が変わるからです。ここから、テーマを決めるポイントを紹介します。

身近な話題で考えやすい

テーマは「身近な話題であること」がポイントです。抽象的で普段あまり考えていないテーマや難しい内容を設定すると、なかなか解決に至らずに探究学習がうまく進まなくなる場合があります。

例えば、次のような日常で感じる「なぜ」「どうして」という疑問から拾い上げてみましょう。

  • 暮らしをより便利にできる商品は何か?
  • ゴミを減らすにはどうしたら良いか?

探究学習に慣れないうちは、このような身近なテーマを設けることが効果を高めるコツです。

あらゆる答えが当てはまる

「さまざまな答えが成りたつ」テーマも、生徒の個性を引き出し、有効です。
わかりやすい答えが見えているテーマは、発表の内容が似たものになってしまいますが、多様性のある答えが出るテーマに設定すれば、生徒それぞれの持つ個性を引き出すことができるでしょう。

深掘りをすることで、質を高める

「どこまでも深掘りできる」テーマは、生徒のモチベーションを向上させ、学習の質も高めます。
簡単に結論が出るテーマは探究ができません今持っている考え以上のものを追求できる問いであればより深く探究でき、これまで気づかなかった価値観や自分の新しい可能性を発見することもできるでしょう。

探究学習のテーマ4例

ここからは、実際に採用されている探求学習のテーマをご紹介します。

地域

自分たちが住んでいる「地域」をテーマすることは、兵庫県立加古川東高校をはじめ、多くの学校が採用しています。

身近なテーマであることはもちろん、自分たちが暮らす町がどのような課題を抱えているのかを調べてテーマに設定し、その解決策を考えることで、社会的に広がりのある探究の学びにつながります。

ものづくり

「ものづくり」もテーマに向いています。

具体的には「生活を便利にできるもの」といったテーマを掲げ、消費者の声を聞いて課題を抽出し、仮説や解決策を考えるという流れで探求学習を行います。

企業の商品開発の仕事を疑似体験することで、ビジネスや起業マインドの育成につながります。

SDGs

SDGs(持続可能な開発目標)も、探究学習のテーマに適しています。国連が提唱するSDGsは、2030年までに解決すべき17の目標を掲げています。

これらの17の目標から、社会が抱える課題をテーマに設定することが可能です。

生徒がテーマを選ぶ

そもそもテーマ選びから、生徒にまかせることも有効な手段です。
生徒の主体性を引き出すためには、生徒自身が興味・関心があるテーマであることが大きな効果が期待できます。

たとえば、生徒が興味・関心のあるテーマの発見には、次のような内容があります。

  • 体験活動を行う:体験活動を通して日常生活に潜む疑問に気づく
  • 資料を比較する:資料を比較して、さまざまな変化を発見する
  • 統計資料を調べる:統計資料の推移から課題を見つける

探究学習を進めるときの、よくある疑問

こからは、探究学習をテーマに沿って進めるときのよくある疑問をまとめました。

生徒が意見を活発に交わすようになるには?

探究学習で生徒が積極的に自分の意見を交わすようにするには、教室が「どのような意見を出しても受け入れられる場であること」が大切です。

生徒にとって安心・安全な場を作ることが活発な意見を引き出すポイントになり、探究学習が目的とする「主体的・対話的で深い学び」を実現します。

探究学習のまとめ方とは?

生徒の学びを深めるには、授業の最後の「振り返り」が大切です。

生徒たちは、学んだことを自分なりの言葉で表現することにより、次の探究へ向かうための学びの道しるべを得ることになります。

振り返りの最も簡単な方法は、教員が口頭で質問して生徒に回答させることです。例えば、次のような質問です。

  • いつ、どこで、なにをしたか
  • 探究でよくできた点は何か
  • 探究の改善点は何か

振り返りを行うときは、「振り返りは成績につながらない」という点を生徒によく伝えることも大切です。「振り返りによって評価されるのではないか?」と感じた場合、評価を高めようと考えて率直な発言ができなくなり、振り返りを行う意義が失われる可能性があります。

探究学習における教師の役割とは?

探求学習において教師の立ち位置は、ファシリテーターが望ましいとされます。

ティーチャーが生徒を指導し、生徒の疑問に応える立場であるのに対して、ファシリテーターは、生徒をサポートし、疑問も含めて、生徒の考えを見守ります。必ずしも生徒の疑問に回答する必要はなく、生徒に問いかけを行うことで、生徒自身が自ら考えるよう促します。

このような教員の在り方によって生徒は、探求学習の楽しさ、主体的な学びに目覚めていくことでしょう。

まとめ

  • 探究学習の意義とは:
    答えのない課題について主体的に考え、問題を探究する心身を育成する。
  • 探究学習のテーマ例:
    • 地域
    • ものづくり
    • SDGs
    • 生徒自身がテーマを選ぶ
  • 探究学習を進めるときのポイント:
    • 教室を「安心な場にする」ことを心がける。
    • 授業の最後に「振り返り」を行う。
    • 教師はファシリテーターに徹する。

以上、探究学習の概要と、テーマの選び方のヒントについてご紹介しました。

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