2022.11.11 (金)

ICT教育の効果を最大化するクラウドサービス! 活用のポイントは?

ICT教育のなかで、クラウドサービスの活用が注目されています。文部科学省は、教育現場改善の手段として、クラウドサービスが有力な解決策であると提言。コスト削減やセキュリティ強化など、学校にクラウドを導入することで得られるメリットは多くあります。
たとえば2021年、千葉県教育委員会は、学びの質を高めるために日本マイクロソフト株式会社と連携し、県立学校においてクラウドサービスを活用したICT利活用に取り組むことを発表しました。教育×クラウドのこうした動きは、今後もますます活発化すると目されています。
この記事では、クラウドの基本情報や教育の現場にクラウドを導入するメリットをおさらいしながら、学校で活用されているクラウドサービスを紹介します。

教育の現場におけるクラウドとは

クラウドイメージ

まずは、教育の現場でクラウドを活用するための基本的な情報をおさらいします。
類似のサービスと比較しながら、クラウドの特長を明らかにしていきましょう。

【いまさら聞けない】「クラウド」の仕組み

クラウド(クラウドコンピューティング:Cloud computing)とは、インターネット上のスペースにファイルや写真、動画などのデジタルデータやアプリ(ソフトウエア)を保存したり、取り出したりできるサービスです。

クラウド誕生以前は、自分の手元にあるコンピュータやタブレットにデータやソフトを保存、管理していましたが、そのやり方では、他の人と情報を共有するときに時間や手間がかかりました。また端末が壊れると同時に、デジタルデータが使えなくなることもありました。

クラウドを利用することで、次のようなことが可能になります。

  • いつでも利用できる(端末を選ばない)
  • どこからでも利用できる(場所を問わない)
  • 生徒や教師間で、簡単に情報の共有ができる
  • 導入が簡単である
  • 導管理やメンテナンスが簡単である

クラウドとオンプレミスの違い

クラウドと対照的なサービスが、オンプレミス(on-premise)です。オンプレミスとは、システム構築に必要なサーバーや回線、ソフトウェアなどを学校内で保有・管理する仕組みです。

ハードウエアを保有しないクラウドとは対象的に、システムを運用する上で必要なソフトやハードを学校内で保有し、管理することになります。

オンプレミスは、サーバーを構築するため、初期費用がかかります。また、構築から運用まですべて学校内で行うため、専門知識を持つ人材も必要です。一方、クラウドは物理サーバーをはじめハードウェアを学校内で準備する必要がありません。

クラウドとサービス「Saas」、「PaaS」、「IaaS」の違い

クラウドサービスは、インターネットを経由してクラウド環境上に存在する仮想サーバー(クラウドサーバー)に接続して、クラウド事業者が提供するサービスを利用します。

クラウドサーバーが提供するサービスは主に「Saas」「PaaS」「IaaS」の3種類で、それぞれの内容は以下のとおりです。

  • SaaS・サース(Software as a Service):
    ソフトウェアを提供する
  • PaaS・パース(Platform as a Service):
    アプリケーション-ソフトが動作する基盤や開発用のプラットフォームを提供する
  • IaaS・イアース(Infrastructure as a Service):
    ITインフラを提供する

クラウドサービスとオンラインストレージの違い

クラウドサービスのひとつに「オンラインストレージ(Online stroge)」があります。

オンラインストレージとは、「オンライン上の倉庫」という直訳そのままに、データやファイルを保存する場所がインターネット上(クラウド)にあるサービスです。オンラインストレージは、インターネット上の倉庫に、デジタルデータを保存したり取り出したりできます。「SaaS」に分類されています。

教育の現場にクラウドを導入するメリット 4つのS

教育の現場にクラウドを導入するメリットはなんでしょうか?
そのメリットをひと言でまとめるなら、「ICT教育の効果を最大化できる」ということです。

総務省は、クラウドを導入するメリットを「Savablet(コスト削減)」「Secure(セキュリティ)」「Scalable(拡張性)」「Seamless(シームレス)」という、4つのSに分けて提唱しています。

ここからは、クラウドのメリットを、4つのSに沿ってご紹介しましょう。

教育クラウドプラットフォームについて(総務省:PDF)

教育クラウドにおける【Savable】:管理や運用コストの削減

学校で自前のサーバを整備する場合、設計や構築、維持管理に大きな手間やコストがかかります。しかし、クラウドを導入することで、導入や運用コストを削減することができます。クラウド環境は複数の自治体で共同で利用できるので、その差額は大きいものになるでしょう。

クラウドではアプリを端末にインストールする必要がないため、端末に高い処理性能が不要となり、端末コストも削減します。また、端末設定が最小限に済むためトラブルが生じにくくなるでしょう。

教育クラウドにおける【Secure】 :安心・安全にデータを保存

クラウドは、セキュリティに不安があるという先入観がありますが、年々、安心・安全にデータを保存できるサービスへと進化を遂げています。 クラウド上で、デジタルデータは、堅牢なデータセンターで、データの漏えいや破損、流失などが起こらないように厳重に管理されています。

また、クラウドにデータを保存することで、データの管理がやりやすくなりました。「いつ」「どこで」「誰が」「どのような処理を行ったか」というデータのアクセス履歴を確認できるため、管理が容易になります。

教育クラウドにおける 【Scalable】:柔軟な拡張性

クラウドには、柔軟な拡張性もあります。
オンプレミスのように自前のサーバーで運用する場合は、まず、初期の開発費用がかかります。さらに生徒数が増加した場合は、サーバやソフトのライセンスを追加する必要があり、そのたびに別途コストがかかります。

対してクラウドサービスの場合、初期の開発費用もスモールスタートが可能で、増設が必要な場合も、必要な期間のみ利用ができるような柔軟な対応が可能ができ、拡張性にも優れています。

教育クラウドにおける 【Seamless】:シームレスな活用

クラウドはインターネットを介したサービスであるため、教育の現場である学校だけでなく、いつでも、どこからでもシームレスな活用ができます。

児童・生徒は、校内だけでなく、家庭でも授業の振り返り学習をすることが簡単になります。クラウドであれば、必ずしも学校の端末を持ち帰りしなくても、違う端末からでもシームレスに学習を継続できるでしょう。

また、教職員は、必ずしも学校にいなくても、自宅などからもアクセスできるようになります。クラウドによって、働き方改革につながるアクションを起こしやすくなるのではないでしょうか?

代表的な教育クラウドサービス 3選

ここからは、教育の現場で活用されている代表的なクラウドサービスを3種類紹介します。

Google for Education(グーグル フォー エデュケーション)

Google社が提供しているクラウド型教育プラットフォームです。

教育機関向けにカスタマイズされた無料のオンライン学習ツール「Google Workspace for Education」を利用できます。24時間365日対応のサポートや、最高レベルのセキュリティ機能を追加費用なしで利用できるのが特徴です。

オンライン上でコミュニケーションをとりながら指導を強化できるメールやチャット、「クラス」と呼ばれるコミュニティをオンライン上に作成できるGoogle Classroomなど、さまざまなツールが搭載されています。

学校用端末としてシェア1位を誇るChromebook(クロームブック)との連携もスムーズです。

Google for Education(グーグル フォー エデュケーション)

Classi(クラッシィ)

Classi株式会社が提供する、新しい学びをサポートするクラウド型教育プラットフォームです。

2020年10月の時点で3000校以上で活用されている日本製の教育プラットフォームで、授業や指導方法の多様化に合わせ、「アダプティブラーニング」「アクティブ・ラーニング」「コミュニケーション」「ポートフォリオ」という4つの視点で学びを支援します。

  • アダプティブラーニング:
    生徒一人ひとりに最適な学習を提供
  • アクティブ・ラーニング:
    主体性を育む授業を支援
  • コミュニケーション:
    先生・生徒・保護者の情報共有を円滑に進める
  • ポートフォリオ:
    学びの軌跡を一元管理し、振り返りを用意にする

さらに、学習状況に応じて追加で利用できる有料サービスもあり、英語4技能や探究学習・協働学習ツールなど、特化した教育コンテンツを利用できる連携サービスで幅広い指導に対応しています。

Classi(クラッシィ)

ロイロノート

ロイロノートは、「思考を見える化する」ことに定評のあるクラウド型授業支援ソフトです。
こちらも、日本製で、全国の15%の学生が使っていると言われています。

ロイロノートを使った授業では情報や考えをまとめる動画や写真、インターネット上の情報を記載したカードを作成し、生徒が主体的になれる双方向授業を実現します。

短い授業時間内でも、直感的な操作で自分の考えを表現できるのが魅力です。作成したカードはクラウドにより生徒の端末同士で共有でき、自分の考えを発表したり、お互いのカードを比較したりして対話的な学びを推進します。

ロイロノート

教育の現場でクラウドサービスを利用するときのポイント

ここからは、学校でクラウドサービスを利用する際の、回線速度や個人情報の保護など、いくつか注意したいポイントをまとめました。

クラウド利用のポイント:通信速度が必要

クラウドサービスはインターネットに接続して利用するサービスであるため、安定した通信速度が前提となります。

ICT端末で撮影した写真をクラウドに保存したり、一斉に動画を視聴したりする際は、大量のデータ容量をやり取りできる回線速度が必要になります。

GIGAスクールにおけるネットワーク環境の問題については「通信速度が遅い」、「端末がフリーズする」などの課題が散見されます。これからクラウドサービスを活用する場合は、包括的に検討する必要があるでしょう。

クラウド利用のポイント:個人情報保護などセキュリティ対応

教育の現場でクラウドサービスを扱う場合、デジタルデータはサービス事業者側に保存されることになるため、個人情報保護をどのように保護していくのかが課題となります。

クラウドサービスと個人情報保護条例の整合性をどのように保ちながら活用していくのかがポイントとなるでしょう。
場合によっては、次のような対応も必要となります。

  • クラウドサービスへの接続をすべて暗号化する
  • 利用する児童生徒の保護者からの同意書の提出してもらう

詳しくは、クラウドサービスに詳しいICT支援員などに相談することが解決の糸口になる場合もあります。

まとめ

  • 教育の現場におけるクラウドとは:
    • いつでも利用できる(端末を選ばない)
    • どこからでも利用できる(場所を問わない)
    • 生徒や教師間で、簡単に情報の共有ができる
    • 導入が簡単である
    • 管理やメンテナンスが簡単である
      つまり、ICT教育の効果を最大化できる
  • 教育の現場にクラウドを導入するメリット 4つのS:
    • 【Savable】:管理や運用コストの削減
    • 【Secure】:安心・安全にデータを保存
    • 【Scalable】:柔軟な拡張性
    • 【Seamless】:シームレスな活用
  • 代表的な教育クラウドサービス:
  • 教育の現場でクラウドサービスを利用するときのポイント:
    • 通信速度が必要
    • 個人情報保護などセキュリティ対応

以上、学校に教育クラウドを導入するメリットや活用されている教育クラウドサービス、クラウドサービス利用の際の注意点についてご紹介しました。

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参照元:

  • 「クラウド」を学校教育で利用するために必要なこと(学校とICT~Sky:Webページ)
  • 「教えて!ICTのA to Z」(ダイワボウ情報システム:Webページ)
  • 教育クラウドとは【ひとことで言うと?教育ICT用語】(iid~リセマム:Webページ)
  • 千葉県教育委員会と日本マイクロソフトが連携協定を締結(日本マイクロソフト:Webページ)