Chromebookのキッティングは、中学生でもできるって本当ですか?
Chromebook(クロームブック)は、全国の公立小・中学校において1位の普及率を誇るICT端末です。
Chromebookが教育現場で人気の理由は、管理が簡単で、セキュリティにも定評がある一方、低価格で大量購入が可能なことが挙げられます。キッティング(初期設定)も非常に簡単で、中学生が自分で使う端末のキッティングを行った事例もあります。
この記事ではChromebookが教育の現場で人気の理由をひもときながら、実際の運用にあたって、キッティングするときの疑問や注意点についてもわかりやすく解説します。
Chromebookとは?
Chromebook(クロームブック)は、全国の公立の小・中学校では1位の普及率を誇るICT端末です。ここからは、その歴史を含めたChromebookの特徴をご紹介します。
国内普及率:日本の公立小・中学校ではナンバーワン
Chromebook の普及率を、日本の状況から詳しくみていきましょう。
2021年における文部科学省の調査では、GIGAスクール構想で調達されている端末総数は約9395万台です。OS別の内訳をみると、GoogleのChromeOSが40.1%を占め、WindowsやiOSを抑えて1位のシェアを獲得しています。
同じく2021年に行われたMM総研という民間の調査結果でも、教育現場ではChromebookのシェアが最も多いという結果が出ています。傾向としてはChromebookは都市部で、Windowsは地方での導入が多く、iPadを擁するAppleは、小学校低学年や特別支援学級、特別支援学校など、キーボードなしでの活用を想定した教育現場で導入されていることが明らかになっています。
Applesを抜いた、Chromebookのざっくり歴史
Chromebookの初代モデルがリリースされたのは、2011年。当時、アメリカの教育用端末といえば、Apple社の端末が主流でした。
ところが2014年、Chromebookは教育向けWeb管理サービス「Google Classroom」と連携するようになってから、そのシェアを拡大させていきます。
2016年から、世界中の教育機関での利用を開始。2017年に行われたアメリカ「Education Week Research Center」による調査によると、K-12(日本の幼稚園1年と高校3年生までにあたる教育期間)層におけるシェアは42%でした。発売から5年、Chromebookは、アメリカの教育現場で1位のシェアを獲得するに至ったのです。
さらにコロナショックによりアメリカ全土がオンライン学習に切り替わる時期にChromebookの無料貸し出しがなされたことも後押しして、2022年現在、Chromebookは、アメリカの教育の現場でメインマシンとなっています。
Chromebookが学校端末として人気があるわけ
Chromebookを提供するGoogle社では、その特徴を5つの「S」として紹介しています。すなわち、「セキュリティ(Security)」、「スピード(Speed)」、「シンプル(Simple)」、「スマート(Smart)」、「シェアブル(Shareable:共有可能)」です。
ここからは、5つの特徴プラスアルファについてご紹介します。
Chromebook、5つのS:「セキュリティ(Security)」
Chromebookは、セキュリティが強固であることに定評があります。
ChromebookのOS、ChromeOSは、サンドボックスという技術で各ソフトウェアが個別に管理されています。システムは完全に分離されているため、仮に一部のソフトウェアがウイルスなどに感染した場合でも残りの部分に被害が派生しない仕組みを構築。新しくウィルス対策ソフトを入れる必要もありません。
また、最新のChromeOSへのアップデートは自動で行われるため、Windowsのように個別にセキュリティのソフトウェアをインストールする必要がなく、更新時に作業を中断する必要もありません。
Chromebook、5つのS:「スピード(Speed)」
Chromebookの起動や動作は迅速です。すぐに起動して、長時間使うことができます。
電源を入れてからログイン画面が表示されるまで、10秒程度。構造そのものが従来のコンピュータと異なるため、起動だけでなく、アプリの立ち上げやファイルの読込みも、従来の端末より速さを実感できるのではないでしょうか?
また、長時間使用にも長けています。1回の充電で最大12時間使用できるため、外出先でバッテリーを忘れても心配ありません。
Chromebook、5つのS:「シンプル(Simple)」
Chromebookのキッティング(セットアップ作業)は、たった4ステップ。
- 電源を入れます。
- キーボードを「日本語」か、「英語」か、選択します。
- ネットワークを設定します。
- Googleアカウント(GmailのIDとパスワード)を入力します。
以上で完了です。Chromebookのキッティングは、いたってシンプルといえるでしょう。
Chromebook、5つのS:「スマート(Smart)」
Chromebookを提供するGoogleのサービスは、すべてGoogleアカウントに紐づいているのが特徴です。Googleアカウントとは、Gmailのアドレスと、それと連携したパスワードのことを指します。
最初にGoogleのメールアドレスとパスワードでログインするだけで、クラウドにあるファイル(Googleドライブ)へアクセスできるようになります。GoogleマップやYouTubeなど、Googleが提供しているアプリケーションでも、履歴などが残って使いやすくなります。など、Googleが提供しているアプリケーションでも、履歴などが残って使いやすくなります。
データは、クラウドにあり、すべてGoogleアカウントと紐づいています。ですから同一のGoogleアカウントでアクセスすれば、異なる端末から、同じデータにアクセスできます。
たとえば端末を家に忘れてきた生徒が、学校の代替機から生徒自身のGoogleアカウントでログインすれば、代替機でも、問題なく授業に参加できるのです。
Chromebookは「スマート(Smart)」な管理も実現
Chromebookは、ほかのOSと比べて端末の管理が手軽なことも魅力のひとつです。とくにWebサービス「Google Classroom」と連動することで、アカウントの一元管理や校務の効率化も実現できます。
Chromebook、5つのS:「シェラブル(Shareable:共有可能)」
Chromebookのデータは、すべてクラウド上で管理されています。
従来のコンピューターのようにパソコン本体にデータを保存しないため、バックアップの必要はありません。言い換えると、端末が壊れてもデータを失う恐れはありません。
「Google Classroom」を介して、生徒同士や教師と生徒がファイルを共有する方法も、とても簡単に行うことができます。
Chromebook、もうひとつの特徴:コスパがいい
Chromebookが学校で人気のある、もうひとつの理由は、そのコストパフォーマンスにもあります。
Apple社の端末と比較すると、3万円台から購入できるChromebookの価格は圧倒的に安く、大量購入が必要な教育の現場に適しているといえるでしょう。
Chromebookのキッティング、実行する時のポイント
Chromebookは、これまで見てきたとおり、キッティング(セットアップ作業)もたった4つのステップで完了するほどシンプルです。
ここからは、新しくChromebookを導入したり、年度更新などで、実際にChromebookのキッティングを実行する際の、素朴な疑問や知っておくと便利なポイントをご紹介しましょう。
Chromebookのキッティングは、簡単?
Chromebookのキッティングは、Widowsなど、ほかのOS端末に比べて簡単であり、短い時間で完了します。
一般的なWindowsのキッティングは、1台あたり数時間もかかるとされていますが、Chromebookは10分弱と言われます。
Chromebookのキッティングは、教師でもできる?
Chromebookのキッティングは、教職員でも可能です。ただしキッティングの自動化には対応していませんので、人海戦術が前提となります。
新品の端末を一からキッティングする必要がある場合は、端末固有の番号、シリアル番号の管理から始まります。シリアル番号と端末の関係がわかるように表などでデータベース化するとともに、端末に管理番号シールを貼るといった作業も必要です。
仮に、1台あたりキッティングに要する時間を10分と想定し、端末総数とキッティング作業日を見積り、対応する人数を決めていきます。
Chromebookのキッティングは、中学生でもできる?
Chromebookのキッティングは、中学生でも行うことができます。
実際に、長野県喬木村立喬木中学校の生徒が、教員の指導のもとでひとりでキッティングを行った事例があります。
同校の中学1年生は、教員の指導のもとに生徒一人ひとりが新品のChromebookでキッティングを行い、50分の授業時間内でキッティングを完了させました。同じ作業を中学3年生で行った場合は、20分ほどで完了しました。
教員だけではキッティング作業が物理的に難しい場合、このように授業のなかで、生徒にキッティングを実施させるという方法もあります。
中学生によるChromebookのキッティング(GIGAスクール 長野県ポータルサイト)
予期せぬトラブルにどうやって対応するか?
Chromebookのキッティング中に想定外の問題が発生した場合は、ひとまずGoogleのヘルプページを参照してみましょう。ここで注意が必要なのは、ヘルプページどおりに対策をしても問題が解決できない可能性がある点です。Googleの仕様は頻繁に更新されるため、仕様の更新にヘルプページの更新が追いついていない場合がままあるからです。
さらに、Googleヘルプコミュニティで質問するという方法もあります。ただし、このコミュニティは、あくまでもユーザー同士が助け合う場所であり、内容によっては解決までに時間がかかる場合も少なくありません。専門用語も飛び交うこともあり、どちらかというと中級者向けのコミュニティになっています。
もちろん、Chromebookの販売店やメーカーでサポートを受けることもできます。
サポート内容は、メーカーによって異なります。
年度更新など物量が多いキッティングは、どのように行うと効率的か?
Chromebookのキッティングは、年度更新など、全校生徒の端末に対して行うことが少なくありません。
数百台~何千台という端末に対して年度更新を行う際、教育委員会や学校職員のみで対応することは非現実的です。
物量が多いキッティングをスムーズに完了させるには、
- MDM(モバイルデバイス管理)を導入する
- ICT支援員を活用する
- 民間のヘルプデスクを活用する
といった方法が効率的でおすすめできます。
まとめ
- Chromebookとは?:
日本の公立小・中学校、アメリカでもシェアナンバーワンを誇る教育向けICT端末。 - Chromebookが学校端末として人気があるわけ:
- セキュリティ(Security)が堅牢で、
- 起動スピード(Speed)が早く、
- シンプル(Simple)な4ステップで起動でき、
- スマート(Smart)にさまざまなサービスと連携し、
- シェアブル(Share:共有)も簡単。
- その上、コストパフォーマンスにも優れている。
- Chromebookのキッティング、実行する時のポイント
- Chromebookのキッティングは、教師でもできる。
- Chromebookのキッティングは、中学生でもできる。
- 予期せぬトラブルが発生したときと、大量の物量に対するキッティング対策をあらかじめ決めておく。
以上、Chromebookの特徴とキッティングを実行する際の注意点をご紹介しました。
もしChromebookのキッティングに不安がある場合は、ICT支援員に相談するのが解決の早道です。ただし、ICT支援員は慢性的な人手不足に加えて、複数の学校を巡回するため、校内に常時待機しているわけではありません。
ICT支援員不在時に気軽に問い合わせできるところから、ICT支援員に加えてヘルプデスクを併用する学校も少なくありません。
ヘルプデスクは、対面ではなく、メールや電話が基本となりますが、多岐にわたるICT業務について気軽に問い合わせできるのがメリットです。
KDCのヘルプデスクには、ICT支援員やシステムエンジニアなどICTのプロフェッショナルが常勤しており、端末のトラブル対応からアプリの基本操作まで幅広く支援します。
たとえば、
- ログインできない
- 電源がつかない
- アプリの操作がわからない
という、ちょっとしたお困りごとから、
- 全校生徒分のアプリをインストールしたい
- OSの最新バージョンを全校一斉にアップデートしたい
- 起動しないアプリを点検して、再インストールしたい
といった教育の現場で大量に発生する業務にも対応しています。
KDCは「電話がつながるヘルプデスク」として、電話応答率が90%以上、簡単なお問い合わせであれば数分で解決へ導いてきた実績があります。
メールからのお問い合わせにも、受付時間内であれば、平均1時間以内というスピード感で応答します。
ICTのお困りごとは、ぜひ、KDCのヘルプデスクにご相談ください。
参照元
- ChromeOSのご紹介(Google:Webページ)
- GIGAスクール構想の実現に向けた1人1台端末整備キッティングについて > Chrome OS 端末の場合(文科省:PDF)
- Chrome OSデバイスを登録する(Google:Webページ)
- Chromebookのキッティング手順(Scrabox)
- 初期化しても大丈夫!Chromebookのキッティングを容易にする方法【前編】(三谷商事:Webページ)
- Chromebook 基本操作マニュアル(ひたちなか市:PDF)
- はじめてのChromebook(札幌市教育委員会:PDF)