2023.07.04 (火)

ICT支援員の導入で期待できる
3つの効果と3つのポイント。

ICT支援員は、学校の授業や校務、校内研修におけるICT活用をバックアップする外部スタッフです。端末の設定やメンテナンス、情報リテラシーに関するアドバイスなど、これからのICT教育に欠かせない人材といえるでしょう。支援員に限らず、学校教育の現場で、教員免許の有無にこだわらない外部人材の登用が増えています。学校外の人材を採用する場合、学校側ではどのような準備が必要となるのでしょうか?
この記事では、実際の導入事例を交えながら、学校にICT支援員を配備することで期待できる3つの効果と、配備するときの3つのポイントを紹介します。

【おさらい】ICT支援員とは?

ICT支援員 効果

学校でICT教育を支えるICT支援員について、おさらいしていきましょう。

特性は、2つあります。「文科省が推奨する人材である」ことと、「コミュニケーション能力に長けている」ことです。

ICT支援員は、文科省が推奨する人材である。

ICT支援員とは、小、中学校から高等学校まで、学校の授業や校務、校内研修など教育の現場を支える人材です。

文部科学省ではICT支援員を「必要不可欠な人材」として位置づけ、2018年から2022年までの5年間で、4校にひとりの割合で配置できるよう整備しています。

ただし、同省の2021年3月の調査では配置済と回答したのは、まだ全国の43%にとどまっており、人材が不足していることがわかります。

ICT支援員は、コミュニケーション能力に長けている。

ICT支援員に関する認定試験に「ICT支援員認定試験」があります。この試験には、通常の資格試験と同じように、情報リテラシーや教育関連の法務について記述式で回答する出題のほかに、支援員としてのコミュニケーション能力を図る「説明力」に関する出題があります。

言い換えると、ITに対する知見に加えて、コミュニケーション能力に長けている人材であることがわかります。端末にログインできないときに生徒に操作方法を伝えるスキル、教師向けにIT研修を行うスキル、それらはすべてコミュニケーション能力と関係しているからです。

学校教育でICT支援員が必要とされるわけ

ここからは、実際の学校教育の現場でのICT支援員の業務について、ご紹介していきましょう。

授業支援

ICT支援員は、端末を活用した授業をバックアップします。

授業中に使うタブレットなどの機器の動作確認や準備、使い終わった後の片付け。端末の操作がわからない児童や生徒には、操作方法のアドバイスも行います。

研修支援

学校内で教職員向けの研修を行う場合は、プロジェクターなどのICT端末を準備したり、後片付けを行ったりします。場合によっては、登壇し、IT研修を行うこともあります。

環境整備支援

端末に障害が発生した場合は、問題点を明確にして一次対応を行います。一次対応で解決しない場合は、関係機関への問い合わせも行います。

校務支援

学校ホームページの更新や教職員がパワーポイントなどで書類を作る場合のバックアップをしたり、報告書を作成したりするなど、教員室でのICT関連の業務に幅広く対応します。

新年度を迎えるたびに必要になる年次更新(端末の設定を更新する作業)もバックアップします。

ICT支援員配備で期待される3つの効果

ここからは、文部科学省の調査データを参考に、学校にICT支援員が配備されることで期待される3つの効果をご紹介します。

①教師の負担が軽減される

文部科学省が調査した「ICT支援員の配置促進に関する調査研究」によると、配備によって、「教師の負担が軽減される」と実感するのは、授業で85%、環境整備で71%、校務で67%と、いずれも高い割合になっています。

②教員のICT活用機会の増加

同じ調査によると、「教員のICT活用の機会が増える」という声も聞かれました。これは、授業で76%、校内研修で63%の割合でした。この調査結果からは、逆説的に、現在、端末の準備に多くの時間を割かれている教師の姿が浮かび上がります。

③ICT活用指導力の向上

さらに同じ調査からは、「ICT活用指導力の向上」という声も聞かれています。授業支援で74%、校内研修で69%です。
アンケートに寄せられた声からも、支援員の配備で、教職員が本来の教育事業に向き合うことができるようになると期待されています。

ICT支援員の導入事例

ここからは、実際の導入事例をご紹介しましょう。

学生ICT支援員による授業支援(群馬県玉村町)

群馬県玉村町では、地元の大学生がICT支援員として活躍しています。教職課程を履修するなど教育に関心が高く、端末の使い方にも長けた学生が、小学校5校を週1回程度訪問。各学校の授業で使用する端末の準備や操作支援、後片付けを行いました。

この学生支援員の活躍によって、教員の負担が大幅に減り、これまで二の足を踏んでいた教員も、授業で端末を活用するになりました。

企業のICT支援員による研修支援(滋賀県草津市)

学習システムを提供している民間企業から、システム利用者向けのサービスの一貫として2名が配備され、月2回程度、学校を訪れてシステムの利用方法について校内研修を行っています。

この研修によって、教員が効率的にシステムの使い方を習得し、授業でも展開できるようになりました。以降、この自治体では、きちんと予算を確保して、毎年、支援員を配置を行っています。

学校にICT支援員に配備するときの3つのポイント

ここからは、外部の人材であるICT支援員が活躍するために、学校側が準備する3つのポイントをご紹介します。

①依頼内容を明確にする。

ICT支援員の業務は多岐に渡ります。学校ごとに、依頼したい内容、求めるスキルは異なるでしょう。
学校側は、どんな業務を依頼したいのか「依頼内容を明確にする」ことが第一歩となります。依頼が具体的であればあるほど、活躍が期待できます。

②学校側の窓口を決める。

ICT支援員との窓口になるのは、学校内で管理職の立場にいる教職員が理想的です。学校の全体的な課題を把握しているのは、管理職の教職員だからです。

業務の負荷が増大している情報教育の担当教員ではなく、管理職の教員が窓口となり、学校としての課題を伝えることで、課題解決に向けて動きだすことができます。

③人材不足は、アイデアで補う。

ICT支援員は、文部省の肝いりにも関わらず、2021年現在では全国で半分以下の配備にとどまっています。これにはさまざまな理由がありますが、根本的な問題として人材不足が挙げられます。

人材不足を補うため、事例でご紹介したように、教育課程を修了した大学生や、学習システムを提供する民間企業の技術者など、さまざまなバックグラウンドをもつ人材が活躍しています。

ICT支援員とともに、ヘルプデスクを併用する学校も少なくありません。

まとめ

  • ICT支援員とは:
    授業や校務で使われるICT機器の運用や管理を行い、教職員をバックアップする外部の人材
  • 期待できる効果:
    ①教師の負担軽減
    ②教員のICT活用機会の増加
    ③ICT活用指導力の向上
  • 配備するときのポイント:
    ①依頼内容を明確にする。
    ②学校側の窓口を決める。
    ③人材不足は、アイデアで補う。

以上、ICT支援員の導入で期待できる3つの効果と3つのポイントについてご紹介しました。

 

参照元(以下、文科省:PDF)

  • ICT支援員の配備を
  • ICT支援員の配置状況と支援事例
  • 「ICT 支援員の配置促進に関する調査研究」アンケート調査及びクイックヒアリング結果