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「STEAM教育」の知っておくべきこと徹底解説!
「STEAM教育」とは教育用語です。「Science(科学)」、「Technology(技術)」、「Engineering(工学)」、「Mathematics(数学)」を統合的に学習するという考え方で、それぞれの頭文字をつなげて「スティーム教育」と読みます。
「STEAM教育」は、GIGAスクール構想やSociety5.0などともに教育現場で注目を浴びている用語です。この記事では「STEAM教育」の理念から展望までをご紹介しましょう。
「STEAM教育」とは?
「STEAM教育」とは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術、リベラルアーツ)、Mathematics(数学)の頭文字を取った造語です。
「STEAM教育」は2000年代にアメリカで始まった教育モデルであり、日本をはじめとした世界中で取り入れられ始めています。
※リベラルアーツとは:古代ギリシャで「自由民として教養を高める教育」のことで、一般よりも高度な教養が身につくものを目的としていた学問です。現代では、「人文科学、社会科学、自然科学の基礎分野を横断的に教育する科目群、教育プログラム」の名称を指します。
AIの誕生や情報処理技術の進歩など、技術革新のスピードが速い現代において、今までの昭和、平成のテストの点数で学習の習熟度をはかる教育だけでは、次世代に対応できません。そこで、国も学校のICT化やGIGAスクール構想を発表するなど、次世代に適応できる能力を持った人材を育成すべく、「STEAM教育」を掲げました。
STEAM教育は、理数系の科目やプログラミング学習だけではなく、社会に密接に結びついた教育方法です。STEAM教育では、知識やスキルはもちろん、次のような能力も身につけることができます。
- 思考力、判断力、論理的思考力、創造力
- 外国語、社会、哲学、化学、物理、情報などの知識を総合的に使える思考力
- 現実社会の課題を発見、解決しようとする姿勢
ここまで聞くと、STEAM教育はとても難しい教育方法と思われるかもしれません。しかし、STEAM教育において重要なのは、児童生徒一人ひとりが、みずから積極的に課題の解決をしようとする意欲を引き出すことなのです。
今までのテストの点数だけ評価する「定量的な」教育の価値観を捨て、新しい教育観を教員や保護者が認識する必要があります。今まで行われてきた教育の再定義やアップデートではなく、新しい教育観を作るものと認識していいでしょう。
すでに文部科学省がSTEAM教育の「教科横断的な学習」の推進について、GIGAスクール構想を進めているほか、経済産業省でも2018年1月より「未来の教室」プロジェクトが設置されており、毎年「STEAM教育」に関する提言を行っています。
STEAM教育とSTEM教育の違い
「STEAM教育」の考え方が誕生する前に、「STEM教育」が提言されていました。
ここでは「STEAM教育」と「STEM教育」の違いについて解説していきます。「STEM教育」は「STEAM教育」と学習、習得する知識で重複する部分があります。それはScience(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)
の4つの領域です。
STEM教育は、この理数系4教科を横断的に学習し、AIやロボット制御、エンジニアリングなどの分野で活かす教育方法です。「STEAM教育」は、このSTEM教育の4教科に、Art(リベラルアーツ、芸術)を加え、文系、理系といった各教科の枠を超えた教育のことです。
STEM教育に「A」がプラスされ、「STEAM教育」になったのは、あらゆる課題に対して、自由かつ創造的に解決する方法を生み出すための思考力や判断力、分析力を身につけさせるためです
そのような能力を身につけるためには、各教科をそれぞれ独立したものと考えて学習する方法では難しく、横断的な教育で知識を深め、思考力や判断力を磨くためのSTEAM教育が誕生しました。
それでは、STEM教育からさらに一歩進んだ教育方法である、「STEAM教育」ではどのようなことが期待されているのでしょうか?
「STEAM教育」の可能性
STEAM教育の特徴は、教科横断的な学習です。STEAM教育で、今までの学習スタイルである、教員が生徒全員に一律に授業をする学習スタイルから脱却します。GIGAスクール構想で掲げる、「主体的で児童生徒一人ひとりの能力や適性に応じた学び」に変化し、子ども一人ひとりが持つ個性や特徴を引き出せる学習スタイルに生まれ変わります。
STEAM教育によって、変化の激しい、先の見えない社会に対応できる人材を育成することが期待されています。たとえば、未知の状況にも対応できる思考力や判断力、表現力を持ち、その力を発揮できる人材です。そのほか社会問題に対して、新しい技術と自分の知識をかけあわせて課題の解決をしたり、新しい価値観を作り出したりする人材の創出も期待されています。
「STEAM教育」を実現するために
それでは日本でSTEAM教育を実現させるために必要なことはなんでしょうか?
ハードとソフト両方の側面から解説していきます。
1. ハード面
まず学校のICT化が必要です。子ども一人ひとりが情報端末を持ち、デジタル教科書やデジタル教材を自在に使える環境がSTEAM教育を行ううえで、大前提です。加えて、ICT支援員など専門家の配置、ITに通じる人材の育成、登用も必要になります。
2. ソフト面
ソフト面では、まずGIGAスクール構想を実現し、子ども達一人ひとりの個性や特徴、学習スピードなどに合わせた、最適な学習機会を提供することが必要です。学習機会は学校の授業だけにとどまる必要はありません。むしろ学校での授業以外の学習の場も必要です。学習教科の分野だけではなく、普段接することがない分野の専門家を招いたワークショップなどもよいでしょう。
たとえば、経済産業省主導の「STEAMライブラリー」が、「体育」と「データ」を関連づけて学習するワークショップを開きました。現在のプロスポーツにおいて、データ分析は必須のものとなっています。
プロスポーツの「データ分析のプロ」を招き、実際のプロスポーツのデータと体育や部活動のデータなどを使って、生徒たちがデータを読んだり、比較したり、それについて深く考え発表するという形です。
このように学校で習っている教科と、別の世界のものを掛け合わせた学習機会を設けることが可能な点が魅力であり、高い学習効果が得られる可能性も持っているのが、STEAM教育なのです。
官民一体となってワークショップの開催やNPO法人などが教材を作成するなど、学外での活動も始まっています。経済産業省は、AIを社会で活かすことをテーマとして、農業とAIを掛け合わせた「農業×データ科学×IoT×ロボティクス」というプロジェクトを行いました。
3. 課題
学校のICT化やSTEAM教育の準備が進む一方で、解決すべき課題も残っています。主な課題として、以下の3点が挙げられます。
- 学習を指導できる教員とICT支援員など専門家の不足
- STEAM教育の教材、情報交換、情報発信の場の不足
- 教育に対する意識改革
学習環境と教材を準備する以外にも、学びを提供する大人が意識を変えることも重要です。
文部科学省がでは「もはや学校の ICT 環境は、その導入が学習に効果的であるかどうかを議論する段階ではなく、鉛筆やノート等の文房具と同様に教育現場において不可欠なものとなっていることを強く認識する必要がある」と文部科学広報の236号で述べています。
STEAM教育が未来を担う子どもたちにとって重要な教育というのはご理解いただけかと思います。しかしSTEM教育を行っていくには、学校のICT教育化、ICT支援員などの専門家の配置が必要です。その点を高いハードルと感じているのではないでしょうか。
まとめ
- STEAM教育とは:
理数系に加え文学、歴史、情報、美術などを加えた、幅広く横断的な教育 - STEAM教育の目的:
未知の課題の解決策を見いだす思考力や判断力、創造力を持った人材の創出 - STEAM教育の課題:
ICT専門家の不足、コンテンツの不足、教育に対する意識改革
今回は「STEAM教育」について解説しました。STEAM教育には教員だけではなく保護者の協力が不可欠です。急務である「STEAM教育」への取り組みですが、「STEAM教育」の知識はもちろん、まずは前提となる「学校のICT化」と「ICT教育」の導入が必要です。
授業以外の業務に忙殺される教員の時間的余裕を作るためにも、ICT支援員の導入やヘルプデスクなど、専門家の知識を借りることで、ICT教育の拡張や展開を図ることが可能になります。
ICT活用サービス部では、そんなお悩みをお持ちの自治体や教育機関へ「ICT支援サービス」を行っています。プロのサポートを受けることでスピーディーに教育ICTを取り入れることができます。「STEAM教育」をスムーズにスタートさせるために、KDCのヘルプデスク・ICT支援員派遣サービスの導入をご検討ください。
参照元:文部科学省HP
- 中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会 第120回 STEAM教育への取り組み
- 新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)
- Society 5.0 に向けた人材育成~社会が変わる、学びが変わる~ (概要)
- 資料「新学習指導要領の趣旨の実現とSTEAM教育についてー「総合的な探究の時間」と「理数探究」を中心にー」(文科省)
- 21世紀の教育・学習 東京⼤学⼤学院数理科学研究科特任研究員 中島さち⼦氏
- 新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)について
文部科学省初等中等教育局 初等中等教育企画課 学びの先端技術活用推進室 - 文部科学広報 第236号
経済産業省
- ページ「about 未来の教室-Learning Innovarion-」(経産省特設サイト)
- STEAM JAPAN STEAM教育ってなに?ワクワクを軸にした次世代の“学び”を解説【保存版】
- 「未来の教室」ビジョン 経済産業省 「未来の教室」と EdTech 研究会 第2次提言
- 「未来の教室」 スポーツにおけるデータ分析
その他
- 論文「STEAM 教育における美術と異領域の統合原理の考察」畑山未央氏
以上