カリキュラム・マネジメントをわかりやすく解説!
応用可能な事例も紹介。
カリキュラム・マネジメント(Curriculum Management)とは、授業を改善するための取り組みです。教育の質を向上させることで学習効果を最大化させることが目的です。
カリキュラム・マネジメントは新しい学習指導要領にも記載があり、ICT教育を推進するなかでも、その重要性は高まっているといえるでしょう。
この記事ではカリキュラム・マネジメントの意味をわかりやすく解説するとともに、実際に効果をあげており、応用も可能な事例もご紹介します。
カリキュラム・マネジメントとは?【わかりやすく解説】
カリキュラム・マネジメント(Curriculum Management)とは、教育の質を向上させるための活動です。
ここから、その詳しい意味や必要性についてわかりやすく解説します。
カリキュラム・マネジメントとは、「授業改善」のこと
カリキュラム・マネジメントとは、「授業を改善するための取り組み」です。具体的には、各学校が教育課程(カリキュラム)の編成や実施、評価、改善に「戦略的に取り込む」ことを意味します。
カリキュラム・マネジメントは、教育の質を高め、学習効果を最大化するためになくてはならないものです。その重要性は、カリキュラム・マネジメントが新学習指導要領の総則に記載されており、文部科学省が新しい時代の教育を推進するための重要ポイントと位置づけているところからもうかがえます。
カリキュラム・マネジメント は、学校全体で考えるべきテーマ
新学習指導要領に基づいたICT教育では、「主体的な学び(アクティブラーニング)」をキーワードに、自ら問題を解決し、情報や技術を活用して新しいものを生み出すことができる人材の育成が始まっています。
そのような人材育成には、STEAM教育のように、教科を横断した総合的な学習を前提とした教育課程の作成が必要です。学年の壁を越えた、学校全体でのカリキュラム・マネジメント確立の必要性が高まっているのです。
カリキュラム・マネジメントは、各校の校長や教頭といった管理職だけではなく、現場の教職員も積極的に参加した学校全体での取り組みが必要です。
カリキュラム・マネジメントの主体は、学校
カリキュラム・マネジメントの主体は、学校です。各学校が、新学習指導要領に基づいた教育目標を実現するために授業改善計画を編成することになります。
カリキュラム・マネジメントを軸にして、教科や学年を越えた組織運営の改善を行っていくことになります。
カリキュラム・マネジメントの3つのポイント
文部科学省は、カリキュラム・マネジメントを確立するために必要な3つのポイントをあげています。
それぞれわかりやすくご説明しましょう。
カリキュラム・マネジメントのポイント①データに基づいて授業設計を行う
カリキュラム・マネジメントのポイント①は、データに基づいた教育課程の編成です。
子どもたちの実態や地域の現状を、経験則だけに頼るのではなく、データに基づいて判断します。
教職員が培ってきた知見を否定するのではなく、あくまでも、貴重な知見にデータを加えることで、より最適な授業プランを作ることを目指します。
さらに教育課程の実施後には、評価と改善を行うPDCAを回します。
PDCAとは、一般の企業で使われる業務改善の手法です。計画(Plan)・実施(Do)・評価(Check)・改善(Action)という4つの工程を繰り返しながら、少しずつ業務を改善して、質を高めていきます。
データに基づく教育過程の編成には、教育DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進も不可欠です。
また、ICT教育の授業デザインについては、海外のICT教育先進国の事例が役に立ちます。
フィンランドやイギリスなどICT教育先進国の事例については、下記の記事でも詳しくご紹介しています。
カリキュラム・マネジメントのポイント②教科を横断的にとらえる
カリキュラム・マネジメントのポイント②は、教科横断的な教育活動の視点です。新しい学習指導要領が目指すのは、授業の質の向上です。そのために、各教科の教育内容を俯瞰でとらえる「視点の転換」が必要です。
「生徒の主体性を引き出しながら深い学びを実現し、思考力や判断力、表現力の育成を行う」
こうした教育目標を実現するには、教育課程におけるすべての教科がそれぞれの役割を果たしつつ、相互に関連させて教科を超えた教育課程の再編成が求められているのです。
教科横断学習のひとつとして注目されているのが「STEAM教育」です。
STEAM教育とは「Science(科学)」「Technology(技術)」「Engineering(工学)」「Mathematics(数学)」を統合的に学び、体験のなかで課題をみつけ、知ること(探究)とつくること(創造)のサイクルを生み出す学習方法です。
STEAM教育の事例ついては、下記の記事でも詳しくご紹介しています。
STEAM教育がもたらした、兵庫県立加古川東高の地域活性化事例
カリキュラム・マネジメントのポイント③地域や外部の人材と連携する
カリキュラム・マネジメントのポイント③は、地域と連携して外部人材や資源を活用するという視点です。
児童・生徒の成長には、社会や地域とのつながりも欠かせません。地域と連携した授業編成は、教育の質を高めることでしょう。
文部科学省では「学校教育における外部人材活用事業」の公募を行っています。多様な経験を持つ人材が学校現場に参画できる環境を整備する取り組みです。就職氷河期世代を対象に教職に関するリカレント教育プログラムも実施しています。
ICT教育に特化した人材としては、ICT支援員の登用も効果的です。
ICT支援員とは、デジタル機器を使った授業のサポートをはじめ、ICT教育を実際に遂行する際のさまざまな課題に幅広く対応し、文部科学省では、ICT支援員を4校に1人配置することを推奨しています。
ICT支援員については、下記の記事でも詳しくご紹介しています。
明日からできるカリキュラム・マネジメント【事例紹介】
地域や外部の人材と連携した大分県小学校の事例。
大分県の佐伯市立明治小学校では、学校、家庭、地域、関係機関が連携する「協育」ネットワークに取り組んできました。基本的な教育方針として「地域のひと・もの・ことを生かした教育活動」を掲げ、地域協育コーディネーターに依頼して、ゲスト教師や学習サポーターの支援を仰いだのです。
地域協育コーディネーターの協力で実施した体験学習には、次のようなものがあります。
- 小学4年生:地域の漁業協同組合の協力のもと、地元の伝統漁法体験
- 小学5年生:稲や地場野菜の栽培から、道の駅での販売までを体験
これらの体験学習後、アンケートからは、「学校が楽しい」と回答した児童が93%、「ふるさとや佐伯市が好き」と回答した児童か97%という好結果につながりました。
教科を横断的にとらえた大阪府中学校の事例。
大阪府の枚方市立第一中学校では、カリキュラム・マネジメントの一環として協働的な学びと主体的な学び、さらには教科横断的な取り組みを実施しています。
たとえば、国語では、文章から読み取れることを班で協力してマトリックスでまとめたり、数学では、問題の解説をホワイトボードにまとめて生徒が説明したり、理科では、実験結果の予想とその根拠を各班がホワイトボードにまとめて発表するといった授業を実施しました。。
一方、教員室では、年間単元配列表を掲示し、どの教科が「いつ」、「どのような資質・能力や技能を育成したのか」を「見える化」。
この取り組みにより、教職員は「今回の授業でも、前回の●●で使った××を使うよ」と、教科間のつながりについて生徒に声をかけられるようになり、各教科の学びが相乗効果を生むようになりました。
まとめ
- カリキュラム・マネジメントについてわかりやすく解説:
- カリキュラム・マネジメントとは、教育の質を向上させるために授業を改善する取り組み。
- カリキュラム・マネジメントは、自ら問題を解決して新しいものを生み出す能力を育むために必要。
- カリキュラム・マネジメントの主体は学校であり、教科や学年を越えた組織運営の改善が求められる。
- カリキュラム・マネジメントの3つのポイント:
- データに基づいて授業設計を行う
- 教科を横断的にとらえる
- 地域や民間事業者の人材と連携する
- カリキュラム・マネジメントの実践事例:
- 地域や外部の人材と連携した、大分県小学校の事例
- 教科を横断的にとらえた、大阪府中学校の事例
以上、カリキュラム・マネジメントの意味をわかりやすく解説するとともに、実際に効果をあげており、応用も可能な事例もご紹介しました。
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参照元:
- 学習指導要領等の理念を実現するために必要な方策(文科省:Webページ)
- カリキュラム・マネジメントって何? 実行すれば学校がどう変わる(日本教育新聞:Webページ)
- カリキュラム・マネジメントとは?押さえておきたいポイントを解説(教育人材センター:Webページ)
- 「カリキュラム・マネジメント」とは?【知っておきたい教育用語】(小学館・皆の教区技術:Webページ)
- 意外と知らない”カリキュラム・マネジメント”(第1回)(内田洋行教育研究所・学びの場:Webページ)
- カリキュラム・マネジメントとは―3つの指針と学校運営の要点―(眼鏡文化史研究室:Webページ)