新学習指導要領が教師に求める4つのポイント【わかりやすく解説】

学習指導要領は、時代の変化や社会のニーズなどを踏まえ、約10年ごとに改訂されています。2017年から改訂がはじまった新学習指導要領のコンセプトは、ずばり「生きる力」。2020年に小学校で施行されたのを皮切りに、中学・高校と、段階的に導入されてきました。変化の激しい時代に改訂された新学習指導要領の要は、ICT教育です。
英語教育、プログラミング教育の義務教育化など、なにかと話題を呼んだ新学習指導要領について、この記事では、背景をわかりやすく解説するとともに、新学習指導要領が求める教師像についても4つのポイントから掘り下げます。

新学習指導要綱が提唱する「生きる力」とは?【わかりやすく解説】

新学習指導要領イメージ

「学習指導要領」とは、全国どこの学校でも一定の教育水準が保てるよう、文部科学省が定める教育課程の基準です。およそ10年に1度の割合で改訂されています。

ここからは、2020年度、小学校からスタートしている新学習指導要綱について、その歴史を振り返りながらわかりやすく解説します。

新学習指導要綱が問う「生きる力」とは、変化の時代への対応力。

新学習指導要領が定義する「生きる力」とは、「社会の変化に自ら対応できる力」です。

デジタルの発達により、情報が過去20年で6000倍に"爆発"しました。時代が急速に変化し予測困難な社会のなかで、子どもたちは自ら課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、自ら判断して行動する力が求められます。
「生きる力」とは、受け身ではなく能動的に対応できる能力を育むためのキーワードです。

1分でわかる学習指導要領の歴史

学習指導要領は、戦後1947年、アメリカの「経験主義」という教育観をもとに新しい学校制度が定められました。「Course of study」を直訳したのが、「学習指導要領」です。
学習指導要領は、その後、知識中心主義へとシフトしていきましたが、知識を重んじる教育は、「おちこぼれ」や「受験戦争」といった社会問題を拡大させます。

こうした課題に対応するため、1980年度の第4回改訂では、学習指導要領は「ゆとり教育」へとシフトします。ゆとり教育では主要教科が週1時間ずつ削減され、週5日制が導入されました。

しかし学力低下などの新たな課題が生まれ、1998年にはゆとりのなかで「生きる力を育む」というキーワードが生まれました。
その後の学習指導要綱は改訂を重ねながら、第8回の改訂では、社会の変化に自ら対応できる人間の育成と、基礎を身につけ「生きる力」を育む、最新の学習指導要領へ受け継がれていきます。

学習指導要領コンセプトの変遷

「経験主義」→「科学技術教育」→「知識中心主義」→「ゆとり教育」→「心豊かな人間の形成」→「生きる力の育成(脱ゆとり)」→「生きる力の育成(新しい時代に必要な3つの柱)」

新学習指導要領の要は、ICT教育

学習指導要領の変遷でもご紹介したとおり、「生きる力」というキーワードは、1998年から採用されています。1998年度版の「生きる力」と最新の学習指導要領が提唱する「生きる力」の大きな違いは、ICT教育の比重にあります。

2018年に教育経済協力開発機構(OECD)が実施した「生徒の学習到達度調査(PISA)」において、日本のICT教育の割合が少ないという不名誉な調査結果が発表されました。

世界では横断的・主体的なICT教育が主流となっている実態を受けて、新学習指導要綱では、GIGAスクール構想などと連動ながら、ICT環境の整備と効果的な活用を推奨しているのです。

平成29・30・31年改訂学習指導要領の趣旨・内容を分かりやすく紹介

中学における新学習指導要綱のポイント

2021年度から実施されている中学における新学習指導要領のポイントは、英語とプログラミング教育です。そのふたつの科目について、詳しくご紹介していきましょう。

コミュニケーション英語授業の増加

中学における新学習指導要領では、英語の授業時間が増えています。文法などの授業はほとんど増加しない一方、「書く」「読む」よりも、「聞く」「話す」といったコミュニケーション英語の基礎技能向上に多くの時間を費やしています。

改訂の趣旨は、グローバル化が進む現代のなかで、一部の業種や職種に限らず「外国語によるコミュニケーションが、多くの人にとって必要となる」という前提に基づいています。この社会情勢を受けて、新学習指導要綱では「他者とのコミュニケーションの基盤を形成する」点を重視した改訂が行われているのです。

プログラミング教育の進化

中学の技術・家庭科科目では、2012年からプログラミング教育が実施されていましたが、新学習指導要領では、さらにプログラミング教育が拡充されています。

技術・家庭科技術分野で「計測・制御のプログラミングによる問題解決」、「ネットワークを利用した双方向性のあるコンテンツのプログラミングによる問題の解決」が追加されています。

小学校におけるプログラミング教育が「プログラミング的思考」を育むものであるのに対して、中学では、実際にプログラミングによって問題解決する授業が展開されています。

新学習指導要領が教師に求める4つのポイント

ここからは、新学習指導要綱を授業で実施するときのポイントをわかりやすくご紹介します。

中学英語は、勉強アプリの活用が効果的

英語学習とICT教育は相性が良く、ヒアリングや英単語の暗記など、楽しみながら繰り返し学習ができる勉強アプリが効果を発揮します。

新学習指導要領の改訂で小学生の英語教育が強化されたことにより、小・中連携で段階的にレベルアップできる英語教育が可能になりました。
つまり小学校3・4年生では英語の「聞く」「話す」を学び、5・6年生ではそこに「読む・書く」が加わるようになるという流れです。

小学校で英語の基礎技能を学んでから中学校に進級するため、中学では、生徒が「英語が話せて楽しい」といった、英語を活用できることが喜びにつながるような授業デザインが求められるようになりました。その一助として、ゲーム性の高い勉強アプリの活用は効果的だといえるでしょう。

新学習指導要領に即した学習評価基準の標準化

学習指導要領の改定に伴い、学習評価も変わりました。この評価基準は、「生きる力」と大きくかかわっています。
新学習指導要綱が掲げる「生きる力」には、育むべき子どもの資質として、次の3つの柱を掲げています。

  • 知識・技能
  • 思考力・判断力・表現力
  • 主体的な学びに向かう力、人間性など

そして、学習評価も、この3つの観点が目安となっているのです。
新学習指導要領の3つの柱と学習評価の観点が一致したことで、属人化した判断に委ねられがちだった学習評価の基準が明確になり、標準化に近づきました。

それぞれ評価基準を、もう少し、わかりやすくご紹介しましょう。

  • 知識・技能
    ⇒各教科で身につけるべき知識やスキルについて、充分に習得しているか。など。
  • 思考・判断・表現
    ⇒各教科で課題を解決する能力があるか、思いを表現する能力があるか、など。
  • 主体的な学習態度
    ⇒ノートを取っているか、挙手をしているか、知識を習得するために試行錯誤しているか、など。

ICT教育が教師に求めるもの

新学習指導要綱ではICT環境を整備し、これらを適切に活用した学習活動の充実が明記されています。新学習指導要領の要は、ICT教育であるといっても過言ではないでしょう。
ICT教育を実現するにあたって、教師に求められる2つのポイントがあります。

ICT活用指導力

ICT教育の実現には、広い意味での情報リテラシーが求められます。なかでも、教師にもとめられるのは、ICT活用指導力です。

これは、端末の操作など技術的なスキルに限らず、ICT教育という新しい考え方にそった授業のコーディネートや生徒をナビゲートしていく力も意味しています。

ICT支援員との連携

新学習指導要領の要であるICT教育は、教師にも、児童生徒にも大きな効果が期待できます。一方、その運用には課題も多く、学校においてICTを活用できる人材は不足している状況です。

学学校におけるICT端末数は、全校生徒を合わせると数百~数千単位となります。仮に、端末のアカウント設定など操作そのものは簡単であっても、端末の数が多いため、膨大な時間がかかります。こうしたICT担当教員の負担を軽減するには、ICTのエキスパート(情報関係人材)の活用が求められています。

情報関係人材のなかでもICT支援員の登用は、教師の働き方改革にもつながるとして、文部科学省も推奨しています。

2021年度 情報関係人材の活用促進に向けた指導モデル 及び 研修カリキュラムの手引き

まとめ

  • 新学習指導要綱の「生きる力」とは?:
    社会の変化に対して、受け身ではなく、自ら対応できる力。
  • 中学における新学習指導要綱のポイント:
    • コミュニケーション英語授業の増加
    • プログラミング教育の進化
  • 新学習指導要領が教師に求める4つのポイント:
    1. 勉強アプリの活用
    2. 学習評価基準の標準化
    3. ICT活用指導力
    4. ICT支援員との連携

以上、ICT教育を要とした新学習指導要領について、わかりやすくお伝えしました。

【ヘルプデスクのご紹介】

本文でも触れたとおり、ICT教育の推進においてICT支援員などのマンパワーは欠かせません。最近では、慢性的な人材不足であるICT支援員の業務を補完するために、ヘルプデスクの利用も増えています。

ヘルプデスクは、対面ではなく、メールや電話が基本となりますが、多岐にわたるICT業務について気軽に問い合わせできるのがメリットです。ICT支援員の不在時には、気軽に問い合わせするできるところから、ICT支援員に加えてヘルプデスクを併用する学校も少なくありません。

KDCのヘルプデスクには、ICT支援員やシステムエンジニアなどICTのプロフェッショナルが常勤しており、端末のトラブル対応からアプリの基本操作まで幅広く支援します。
たとえば、

  • ログインできない
  • 電源がつかない
  • アプリの操作がわからない

という、ちょっとしたお困りごとから、

  • 全校生徒分のアプリをインストールしたい
  • OSの最新バージョンを全校一斉にアップデートしたい
  • 起動しないアプリを点検して、再インストールしたい

など、もちろん年次更新のキッティングにも対応しています。

KDCは「電話がつながるヘルプデスク」として、電話応答率が90%以上、簡単なお問い合わせであれば数分で解決へ導いてきた実績があります。

メールからのお問い合わせにも、受付時間内であれば、平均1時間以内というスピード感で応答します。遠隔サポートにも対応しています。

ICTのお困りごとは、ぜひ、KDCにご相談ください。

【ICT支援員のご紹介】

KDCのICT支援員に興味のある方はこちらまでお問合せください。

参照元:

  • 平成29・30・31年改訂学習指導要領の趣旨・内容を分かりやすく紹介(文科省:Webページ)
  • 5分でわかる小学校学習指導要領の変遷!改訂のポイントと流れを解説!(TFJ japan:Webページ)
  • 日本の教育の歴史!学習指導要領改訂による教育の移り変わりを時代背景とともに解説!(クラビノ:Webページ)
  • 学習指導要領改訂と3観点の整備で重視したい「自らの学習を調整」する力 3観点「主体的に取り組む態度」をどう見るか(東洋経済オンライン:Webページ)