GIGAスクール構想、2022年度の現在地。
基本から事例まで【わかりやすく解説】

GIGA(ギガ)スクール構想とは、文部科学省が提唱する「ICT教育の実現に向けた取り組み」です。「1人1台端末」と「高速ネットワーク」を整備することによって教育格差をなくし、子どもたちの個性に合わせ「個別最適な学び」の実現を目指します。
GIGAスクール構想は、2019年に文部科学省が提唱し、2021年度からは本格的な運用が始まっています。2022年度の進捗状況は、つまり現在地は、どこにあるのでしょうか?
この記事ではGIGAスクール構想について、いまさら聞けない基本の考え方から、明日から使える事例まで、2022年度の最新情報を盛り込みながら、わかりやすくご紹介します。

GIGAスクール構想とは?【わかりやすく解説】

GIGAスクールイメージ

GIGAスクール構想は2019年の文部科学省の提言から始まりました。ここからは、いまさら聞けないGIGAスクール構想についておさらいするとともに、2022年現在の状況を紹介します。

GIGAスクール構想とは?

GIGAスクール構想をわかりやすく解説します。

GIGAスクール構想は、2019年12月に、文部科学省が立ち上げた教育のビジョンです。このビジョンを読み解くキーワードは、次のふたつです。

  • 「1人1台のパソコンやタブレット端末」用
  • 「高速ネットワーク」

GIGAスクール構想は、なぜ、このふたつがキーワードとなっているのでしょう?

「1人1台端末」や「端末を使うためのネットワークを整備する」ことは、学校のICT環境を整備し、活用するための具体的な手段だからです。

それでは、なぜ、学校のICT環境を整備する必要があるのでしょうか?
それは、

「教育格差をなくし、多様な子どもたちを誰ひとり取り残すことなく、公正で個別最適化された学びを実現する」
からです。

つまり、「教育格差をなくす」という理念を実行に移す手段として採用されたのが「ICT教育」であり、ICT教育を実現する手段として「1人1台端末」「高速ネットワーク」の導入が急ピッチで進められたのです。

GIGAスクール構想の概要については、こちらの記事でも詳しく説明しています。

GIGAスクール運営の課題を深掘りして、学校のICT化を円滑に!

【個別最適な学び】GIGAスクール構想が目指す教育の理想形とは?

GIGAスクール構想でできること

GIGAスクール構想をとり入れることで可能になる新しい授業の在り方は、次のようなものです。

  • 双方向の一斉学習:
    児童・生徒が1人につき1台の端末を活用することで、教師から子どもたちへ一方通行で知識を伝える詰め込み型ではなく、端末を介して生徒と子どもたちが対話できる「双方向型の一斉授業」が可能になる。
  • 個別学習:
    教師は、端末に蓄積された学習履歴(スタディログ)から一人ひとりの学習状況を把握することができる。個々の学習履歴に応じて、児童・生徒の個性に応じた学習指導が可能になる。
  • 協働学習:
    児童・生徒が使う端末画面をクラス全員で共有するなど、子どもたちの考えを共有することができる。子ども同士で意見交換をしたり協力したりして、正解に限らず、納得解まで導くことができる。

GIGAスクール構想、2022年の現在地

ここからは、GIGAスクール構想の2022年現在の端末とネットワークの普及率と、活用状況についてご紹介しましょう。

1人1台端末、2022年時点の普及率と活用状況

文部科学省では小中学校における1人1台の端末整備について、2021年3月段階では98.5%の普及率を発表。「2021年度内に整備完了の見込み」と公表しています。つまり、「1人1台端末」の整備は、ほぼ完了しているといえるでしょう。

一方、利活用については、まだ充分とは言えません。
民間企業が2021年後半に行った調査によると、およそ80%の教師が端末を使った授業を「週1回以上行っている」と回答する一方、「端末の活用方法がわからない」「操作方法がわからない」という声も多く寄せられていたからです。

通信環境、2022年時点の普及率と活用状況

IGIGAスクール構想が目指す、「校内ネットワークの整備」も2022年時点では、ほぼ完了しています。2021年5月末時点の調査では、校内ネットワークの供用を開始した学校の割合は98.0%まで普及しました。。

とはいえ、校内ネットワークにも課題が残っています。2022年現在、インターネット接続の遅延など接続に関する課題が多く、「つながらない」「遅い」といった声が聞かれます。そうしたネットワークに関する課題の原因はさまざまですが、いずれにせよネットワークインフラの強化が求める声が大きくなっています。

以上をまとめると、全国の小・中、高等学校において「1人1台端末」や「高速ネットワーク」の配備はほぼ完了し、GIGAスクール構想は運用段階に入っていることがわかります。

ただし、端末やネットワークなどのハードウェアは揃ったものの、利活用においては、課題が山積みとなっているというのが、2022年の実態といえるでしょう。

【明日から使える】GIGAスクール活用事例3選

ここからは、ほかの地域でも取り入れることが可能なヒントやアイデアに満ちた、わかりやすいGIGAスクールの事例を3選ご紹介します。

GIGAスクール構想事例①:茨城県つくば市

研究学園都市として名高い茨城県つくば市は、GIGAスクール構想が立ち上がるはるか昔、実に、1977年からICT教育を実践しています。

40年以上前、日本ではじめて小学校の授業にコンピュータを導入した経験をもとに、ICT教育は次の「4つのC」を育む最適なアプローチとして積極的に取り入れてきました。

  • Community(協働力)
  • Communication(言語力)
  • Congnition(思考・判断力)
  • Comprehension(知識・理解力)

同市の学校は、学校情報化優良校に認定されているのをはじめ、その長年のノウハウは、つくば市総合教育研究所が「ICT教育活用実践事例集」としてWeb上に公開しています。

つくば市ICT教育活用実践事例集

同研究所では、学校や地域によって運用が異なる持ち帰りについても、学年別に運用をルール化しており、こちらも一般に公開されています。

PC持ち帰り学習の手引き 令和3年度版

GIGAスクール構想事例②:神奈川県相模原市

都心へ通勤するファミリー層が暮らす、いわゆるベットタウンというイメージが強い相模原市も、20年以上も前から、積極的に、教育の情報化に取り組んできました。

GIGAスクール構想が提唱されてからは、Chromebook(クロームブック)とGoogleが提供するサービスを活用して、市を挙げてGIGAスクールを推進しています。

相模原市教育委員会では、100ページを超えるGIGAスクールのガイドブックを一般公開しています。GIGAスクール構想に基づいた教科別の授業プランから校務効率化のヒントまで、網羅的にガイドしています。

このガイドブックによると、ICT活用の特性は、次の3点になります。

  • 膨大な情報を収集、整理・分析でき、個々のニーズに合わせて容易にカスタマイズもできる。
  • 音声や画像、映像のデータを蓄積し、送受信できる。
  • 相互に情報の発信・受信のやりとりができる。

このガイドブックでは、上記のようなICTの特性を、各教科で活用する方法についても解説しています。

さがみはらGIGAスクールハンドブック

GIGAスクール構想事例③:大阪府高槻市

大阪府内「住みたい町ランキング」の常連である大阪府高槻市は、子育て支援制度が充実していることでも有名です。
同市では、2022年初頭に、市立小中学校全59校においてすべての児童・生徒にChromebookの端末整備が完了しました。Chromebookは、ノートパソコンとしても、タブレットとしても活用できる利用範囲が広がる端末です。

同年1月には、地元のケーブルテレビで、「GIGAスクール構想によって子どもたちの学びの質がどのように変わったか」というテーマの番組が放映され、話題を呼びました。

【高槻市】GIGAスクール構想 タブレットで変わる子どもたちの学び

また、GIGAスクール導入により懸念される近視対策の取り組みも行っています。

日本眼科医会と協力して、情報端末を使うことによる近視の進行を少しでも防ぐため、端末利用時の注意事項をわかりやすくイラスト化したデジタルチラシを配布しています。

子どもの目・啓発コンテンツについて

GIGAスクール構想の運用時の課題を深掘り

最後に、ICTの利活用が進むことで見えてきたGIGAスクール構想運用時の課題についても、わかりやすく掘り下げていきましょう。

ICT端末のOSやソフトが違うので、学習成果物が引き継ぎできない。

GIGAスクールで配備されたICT端末のOSは、Chromebook、Apple、Windowsと3種類が混在しています。学習支援ソフトは、より複雑で、学校によって細かく分かれています。そのため、転校や卒業の際に、端末に蓄積された学習成果の引き継ぎが複雑になっています。

積み重ねてきた学習成果物をどのように残すかについては、文部科学省でも「年度更新タスクリスト」で言及しています。マニュアル作成やルール化が求められるところです。

ICT端末の持ち帰りルールが徹底されていない。

端末の持ち帰りについては、自治体ごとに対応が異なります。端末を持ち帰ることで、学びが深まることが期待される一方、家庭のネットワーク環境に依存する部分が大きい点、端末の破損や紛失、大切な個人情報の流出といったリスクも存在します。

メリットをとるか、デメリットをとるか、その見解は各自治体ごとに分かれています。

ICT研修を受ける時間がない。

IGIGAスクール構想を実現するには、教員側の指導体制を見直す必要があります。

教育の現場には、デジタル機器の扱いに不安のある教職員も少なからず存在します。そのような場合は、ICT支援員を整備したり、ICT活用に関する研修を充実させたりといった対策が求められています。

しかしこの課題の根底には、忙しすぎてIT研修を受ける時間を作ることもままならない教師の働き方と密接に関係しています。

GIGAスクール構想を支える人材が不足している。

GIGAスクール構想の実現に欠かせないのが、ICT支援員です。ICT支援員はICTを活用した授業などがスムーズに行えるよう、日常的に教員がICTを活用するときにサポートします。

文部科学省では2022年度までの5カ年計画で、全国の小中学校など4校に1人のICT支援員配置を目指しています。しかし、その目標にはほど遠く、地方を中心に、ICTに詳しい人材が不足していることが課題となっています。

まとめ

  • GIGAスクール構想とは:
    「1人1台端末」と「ネットワークの整備」でICT教育を実現し、教育格差をなくすという文部科学省のビジョン。
  • GIGAスクール構想、2022年の実情:
    「1人1台端末」や「高速ネットワーク」の配備はほぼ完了したが、利活用においては、課題が山積みとなっている。
  • GIGAスクール構想の運用時の課題:
    • ICT端末のOSやソフトが違うので、学習成果物が引き継ぎできない。
    • ICT端末の持ち帰りルールが徹底されていない。
    • ICT研修を受ける時間がない。
    • GIGAスクール構想を支える人材が不足している。

以上、GIGAスクール構想の2022年の現在地と、明日から使える事例、そして、課題についてもご紹介しました。

IGIGAスクール構想は運用段階に入りましたが、まだいくつもの課題を抱えていることが明らかになりました。

もしICTの利活用に不安がある場合は、ICT支援員に相談するのが解決の早道です。ただし、ICT支援員は慢性的な人手不足に加えて、複数の学校を巡回するため、校内に常時待機しているわけではありません。

ICT支援員不在時に気軽に問い合わせできるところから、ICT支援員に加えてヘルプデスクを併用する学校も少なくありません。

ヘルプデスクは、対面ではなく、メールや電話が基本となりますが、多岐にわたるICT業務について気軽に問い合わせできるのがメリットです。

KDCのヘルプデスクには、ICT支援員やシステムエンジニアなどICTのプロフェッショナルが常勤しており、端末のトラブル対応からアプリの基本操作まで幅広く支援します。
たとえば、

  • ログインできない
  • 電源がつかない
  • アプリの操作がわからない

という、ちょっとしたお困りごとから、

  • 全校生徒分のアプリをインストールしたい
  • OSの最新バージョンを全校一斉にアップデートしたい
  • 起動しないアプリを点検して、再インストールしたい

といった教育の現場で大量に発生する業務にも対応しています。

KDCは「電話がつながるヘルプデスク」として、電話応答率が90%以上、簡単なお問い合わせであれば数分で解決へ導いてきた実績があります。
メールからのお問い合わせにも、受付時間内であれば、平均1時間以内というスピード感で応答します。

ICTのお困りごとは、ぜひ、KDCのヘルプデスクにご相談ください。

参照元:/p>

  • GIGAスクール構想の実現について(文科省:Webページ)
  • これさえ見ればわかる!〜かんたん解説〜最近よく耳にするGIGAスクール構想って何?(みらいい/イノビオット:Webページ)
  • 小・中学校の授業がオンライン化!【GIGAスクール構想】についてわかりやすくご紹介します(しゅふジョブnavi:ニュースサイト)
  • GIGAスクール構想とは スタートから1年 現状と課題を徹底解説(寺子屋朝日:ニュースサイト)
  • GIGAスクール構想の目的とは?予算や環境整備、指導者に求められるポイントを解説(日本教育新聞:ニュースサイト)