2022.06.21 (火)

データで見る教師の働き方改革。
今日からできるアイデアも紹介。

教師の働き方改革が急務です。
日本の小・中・高等学校教師の勤務時間は、諸外国と比べると圧倒的に長いという調査結果があります。「日本の教師は、世界一忙しい」と、言っても過言ではありません。
教師の働き方は、過労死ライン越えの長時間労働、部活指導など授業以外の業務の増加など、改革すべき問題が山積みです。2021年11月の調査によると、小中学校教員の半数が「休憩時間0分」、60%以上が「教師を辞めたいと思ったことがある」という衝撃の結果も出ています。
この記事では、教師の働き方の実態を各種データで浮き彫りにしながら、小さな改革ではあっても、今日からできる時短の取り組みも紹介します。

教師の働き方改革は、なぜ必要か?

教師の働き方改革

教師の働き方改革の背景となる深刻な労働の実態を、各種データからご紹介します。

過労死ライン超えの時間外労働

教員の働き方に改革が必要とされる最も大きな理由「教師の長時間労働」について、解説しましょう。

日本教職員組合「2021 年 学校現場の働き方改革に関する意識調査」 によると、小学校から高校まで1月あたりの教師の時間外労働時間は、次のような過酷な状況です。

  • 小学校教師=90時間16分
  • 中学校教師=120時間12分
  • 高校教師=83時間32分

時間外労働の過労死ラインは月80時間ですから、過労死ラインもゆうに超えています。

教師の長時間労働は年々深刻化し、2020年に文科省が「時間外勤務は月45時間まで」という指針を出しています。2021年4月には給特法(「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」)も改正されましたが、その理想には程遠いものがあります。

「2021年 学校現場の働き方改革に関する意識調査」

日本の教師は「世界一忙しい」

教師の働き方を、日本と海外で比較してみましょう。

OECD国際教員指導環境調査(TALIS)2018調査結果によると、日本の小・中学校教師の勤務時間は、諸外国と比べても最長であることがわかります。
「日本の教師は、世界一忙しい」という表現は、このデータに基づいています。

  日本平均 諸外国平均
中学校教師の仕事時間・計/週 56時間 38.3時間
授業時間 18時間 20.3時間
課外授業 7.7時間 1.9時間

注目すべきは、仕事時間計56時間のうち、授業時間が18時間と半分にも満たない点です。

このデータからは、日本の教師がICT端末の管理や校務など「授業以外の活動に忙殺されている」現状がわかります。
なかでも部活に費やす時間は「7.7時間」と参加国のなかで最も長くなっています。

「我が国の教員の現状と課題 – TALIS 2018結果より –

小中学校教師の半数が「休憩時間0分」

2021年11月、名古屋大大学院の内田良教授らのグループが公立の小中学校で働く教師を対象にした「学校の業務に関する調査」 で、「1日あたりの休憩時間」と尋ねたところ、次のような衝撃的な結果がでました。

  • 小学校教師=0分(51.2%)平均9.4分
  • 中学校教員=0分(47.3%)平均14.6分

学校が定める所定の休憩時間は45分です。ところが実態は、小中学校教師の半数が過労死超えの時間化外労働に加えて「休憩時間0分」で働いているというのです。

さらにこの調査からは、回答者の80%が「教師の仕事には魅力がある/やりがいがある」と回答する一方、60%以上が「辞めたいと思ったことがある」という苦悩も浮かび上がっています。

「学校の業務に関する調査」 2022.5.13. 「学校の業務に関する調査」(2021年11月実施)の記者会見

「授業は準備不足、いじめ発見に不安 教員の「見えない残業」子どもに影」寺子屋朝日編集部/一般社団法人社会応援ネットワーク

教師の働き方改革を実現するための仕組みづくり

教師の働き方を改革するためには、次のような大きな仕組みづくりが必要になります。

  • 既存業務の見直し
  • 外部人材の登用

どちらも現場の教師の一存で実行できる改革ではありませんが、まずは教師の働き方を変えるヒントとなる大きな枠組みについてご紹介しましょう。

既存業務の見直し

教師の働き方改革を推進するための第一歩は、既存業務の洗い出しからはじまります。まずは管理職を含めた全教職員の勤務時間を把握するために、勤怠管理をデジタル化しましょう。
自己申告や手書きの勤怠表の代わりにタイムカードや勤怠ソフトを導入するのです。

勤務時間を正確に把握した後には、業務の洗い出しと切り分けを行って具体的な対策を講じます。
こうした働き方改革を進める上で管理職、なかでも校長の役割は大きく、改革の趣旨を周知し学校の実態に即した適切な取り組みが求められます。

外部人材を活用する

教師の業務を見直して切り分けを行った後には、授業以外の業務を外部人材に委託するという方法も有効です。2020年度から始まった新学習指導要綱では「社会に開かれた教育課程」というキーワードで、社会と連携した学校教育を推奨しています。

たとえば長時間労働の要因となっている教師による部活の指導には、専門の指導員の採用という方法があります。また、授業におけるICT端末の準備や管理は、ICT支援員やヘルプデスクサービスの活用が期待できます。

さらに、これまでは教師の業務とされてきた成績処理も、サポートスタッフが参画したり、CBT(シービーティー:Computer Based Testing)などコンピュータが担うケースも増えています。

このように、業務内容に応じて、教師の代わりに民間企業、地方公共団体やスクールカウンセラー、地域ボランティアなどの外部人材への委託が始まっています。

文科省では、学校と外部人材をつなぐ仕組みを構築中

文部科学省では「就職氷河期世代を対象とした教職に関するリカレント教育 (recurrent:学び直し教育) プログラム」を実施しています。

このプログラムでは、教員免許を取得している就職氷河期世代を対象に、教育の現場で即戦力として活躍するための研修を行います。
具体的には最新の教育事情やICT教育の手法について学びます。文科省は、このような方法で教師の働き方改革をバックアップしているのです。

「令和4年度『学校教育における外部人材活用事業』の公募について」

元教師と現役教師が提案する今日からできる働き方改革

教師の働き方改革02

教師の働き方改革のなかでも、もう少し身近で、教師個人が今日からできる施策としてICT活用があります。ここからは、元高校教師と現役小学校教師が提案する校務を時短するICT活用アイデアをご紹介します。

ICT活用で繰り返し校務からの解放

ICTを活用することで、効率的に時短しながら校務が実施できるようになります。

たとえば、プリント配布や出欠管理、成績処理などを手作業からパソコンに移行するだけでも、繰り返しの単純校務から解放されます。

通信手段も、電話だけでなくメールを使えば、教師のペースで校務をすすめることができます。
保護者会や、他校の教職員との意見交換会もTeamsやGoogleMeet、Zoomなどのオンライン会議システムを活用することで移動時間が不要になります。

元高校教師で、現在は、日本マイクロソフトのソリューションスペシャリストとして活躍する栗原太郎氏は、「元教員が本気で考えた、働き方を劇的に変えるICTの小技10」をPDFで公開。
マイクロソフトのサービスを利用しながら、校務を効率化できるアイデアを紹介しています。

校務での導入例については、こちらもご参照ください。

ICTの時短テクニックを活用して生産性をあげる

『先生のためのICTワークハック』を上梓し、ICT関連の多数の資格をもつ現役の小学校教師、前多昌顕氏が、EdTechZineオンラインセミナーで、「デジタルでもアナログでもできることは、まずデジタルでやりましょう」と提言をされています。同セミナーでは、パソコンを使った時短テクニックとして、音声入力やショートカットキーの使い方を紹介しています。

ICT活用に抵抗がある教師にとっては、はじめはハードルが高いと感じる操作もあるかもしれません。しかしICTの時短テクニックは、一度覚えてしまえば確実に生産性があがります。
もし操作に不安が残る場合は、ICT支援員やヘルプデスクサービスの外部人材を利用することで、不安を取り除くことができるでしょう。

『先生のためのICTワークハック』 著・前多昌顕 明治図書出版

まとめ

教師の働き方改革が必要な理由:

  • 過労死ライン超えの時間外労働をしている。
  • 授業以外の校務や部活動に忙殺されている。小中学校教師の半数が「休憩時間0分」、6割超が「辞めたいと思ったことがある」

教師の働き方改革を実施するための仕組み:

  • 既存業務の見直し
  • 外部人材の登用

今日からできる働き方改革:

  • ICTを活用して校務を時短する

以上、教師の働き方改革について、その実態から今日から取り組むことのできるアイデアまでをご紹介しました。

教師の働き方には抜本的な改革が急務ですが、一方、今日からできる小さな働き方改革もあります。長時間労働から解放されるには、時短や効率化を可能にするICT活用が早道です。

もしICT活用にご不明な点や不安がある場合は、ヘルプデスクサービスの利用がおすすめです。
ヘルプデスクは、対面ではなく、メールや電話で対応します。多岐にわたるICT業務のなかで「ログインできない」「電源がつかない」という、ちょっとした疑問について気軽に尋ねることができるのがメリットです。

KDCのヘルプデスクには、ICT支援員やシステムエンジニアなどICTのプロフェッショナルが常勤しており、端末のトラブル対応からアプリの基本操作まで幅広く支援します。
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メールからのお問い合わせにも、受付時間内であれば、平均1時間以内というスピード感で応答します。

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参照元

  • 2021年学校現場の働き方改革に関する意識調査(詳細版)
  • 「教員勤務実態調査」(文科省:PDF)
  • 「学校における働き方改革について」(文科省:PDF)
  • 学校における働き方改革の 取組状況について(文科省:PDF、yahoo news、寺子屋朝日)
  • 休憩0分で働き続ける「教師の働き方」が明らかに。なり手を増やすのに必要なことは(yahoo news)
  • 「学校の業務に関する調査」 2022.5.13. 「学校の業務に関する調査」(2021年11月実施)の記者会見(日本教育新聞)
  • 授業は準備不足、いじめ発見に不安 教員の「見えない残業」子どもに影(寺子屋朝日)