【ICT教育事例】
「ハイブリッド教育」を目指す滋賀県草津市の取り組みとは?

ICT教育に対して常に先進的な取り組みを続け「ICT教育のトップランナー」と言われているのが、滋賀県草津市です。2014年、GIGAスクール構想が立ち上がるはるか以前から、教室にタブレットを導入するとともに人材配置にもこだわった仕組みを作りました。その後もアナログとデジタルを融合させたハイブリッド型のICT教育を推進。2019年には、文部科学大臣賞も受賞しています。
この記事では滋賀県草津市が取り組むICT教育の事例について、時系列でわかりやすく解説します。ICT教育を実践している事例を知り、学校の教育に取り入れるためのヒントがほしい方はぜひ参考にしてください。


 

 2014年 ICT教育をGIGAスクールに先駆けて始動

 

ICT教育のトップランナーと謳われる滋賀県草津市は、江戸時代から宿場町として栄えた地域です。現在も交通の要衝として企業が集まり、「住みよさランキング」(東洋経済新報社)の西日本エリアでは、常に上位に名を連ね、近年は若い世代を中心に人口の流入が続いています。

まずは、この草津市が、なぜ、政府のGIGAスクール構想に先駆けてICT教育に取り組んできたのかについて詳しくご紹介しましょう。

 

GIGA以前から、タブレットを導入

滋賀県草津市がICT活用に取り組むようになったのは、文部科学省のGIGAスクール構想のはるか以前、2009年度にさかのぼります。同年、草津市は、文部科学省の「電子黒板を活用した教育に関する調査研究」事業のモデル校となり、市内の2校に電子黒板を導入しました。その結果、生徒の理解を促す授業づくりや教員の指導力向上に大きな成果を得ることができました。

このICT事例を皮切りに、学校のICT化が一気に進みます。2010年度から全校に電子黒板やデジタル教科書の導入が、そして2014年度からはタブレット端末の導入が始まり、さまざまな事例が生まれていきます。

草津市立松原中学校1年の社会科の授業で行ったアンケートでは、タブレット端末を活用した授業について「よくわかる」と答えた児童・生徒は95%以上、「楽しい」と答えた児童は93%以上という結果が報告されています。

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草津型アクティブ・ラーニング」の推進

「ICT教育」と一口にいっても、さまざまなアプローチや取り組み方が存在します。草津市では、2015年からノート・黒板などアナログ教材と端末・電子黒板などデジタル教材を融合させたハイブリッド教育を展開しています。

これを「草津型アクティブ・ラーニング」と名づけ、これまでの「受動的な授業」から、児童・生徒が自ら問題を発見し解決に向けて主体的・協働的に「学び合う授業」への転換を図ってきました。

 

「タブレット活用推進リーダー」の選定

ICT教育には端末を配布して終わりではなく、その運用、なかでも教員のIT研修が大切なポイントとなります。

草津市では、授業実践の推進役として「タブレット活用推進リーダー」を各校1名ずつ選定し、各学校においてICT活用の中核となる教員を育成しています。

ICT機器やTV会議システムの活用などの研修を重ね、毎年度新たなメンバーを選定して人材育成を図っています。

 

2019年「日本ICT教育アワード」で文部科学大臣賞受賞。

草津市のICT教育への取り組みは様々な成功事例を生み、2019年には、「日本ICT教育アワード」で滋賀県草津市教員委員会の「ICT活用で『元気な学校』をつくる草津市の戦略9」が最高賞の文部科学大臣賞を受賞しています。

この賞の概要や受賞のポイントをご紹介しましょう。

   

「ICTの活用で『元気な学校』をつくる草津の戦略9」概要。

ICT教育の取り組みによって文部大臣賞を受賞したプレゼンテーションは、推進計画の策定やICT教育を担当する専門部署の設置、教育委員会と市長部局との連携などを「戦略9(ナイン)」としてまとめたものです。

大学・企業との積極的な連携や、ICT活用の取り組みを積極的にPRすることも盛り込まれています。

 「ICTの活用で『元気な学校』をつくる草津の戦略9

 

受賞のポイント。

「ICTの活用で『元気な学校』をつくる草津の戦略9」が評価されたポイントは、ICT活用を学校経営の核として位置付けていることです。しっかりと教育情報化推進計画を立て、ICTを専門に扱う課として「学校政策推進課」を作り、本気でICT教育に取り組む姿勢が評価されました。

また、ICT端末や機器などの環境整備だけでなく、ICT支援員の配置や元校長を教育スーパーバイザーとするといった人的配備を行っていることも受賞のポイントです。

ICT活用を進めるためには、校長など管理者のリーダーシップが欠かせません。そのため草津市教育委員会では、小学校の校長を退任したベテランの人材をスーパーバイザーに配置しました。スーパーバイザーは現場の校長に学校経営の指導を行ったり、悩みや課題の相談相手になったりしています。

 

2020年 ICT教育のトップランナーとして積極的な情報発信。

滋賀県草津市はいまやICT教育のトップランナーとして、積極的に情報共有を行っています。

2020年から行っているICT教育の事例をみていきましょう。

 

全国ICT学校フォーラムにおける視察。

2020年1月、草津市で全国ICT学校フォーラムが開催され、全国の教育関係者が草津小学校を視察しました。

市では以前から教育委員会と情報や課題を共有して取り組みを進めていることを紹介するとともに、アナログとデジタルのハイブリッド教育において松尾芭蕉の「不易流行(ふえきりゅうこう)」を実現していることをアピールしています。不易流行とは「いつまでも変化しない本質的なものを忘れないなかで、新しく変化するものを取り入れていく」という意味です。

視察では草津市独自のICT教育のスタイルによる具体的な取り組みを「草津モデル」として、以下の内容を紹介しました。

 

  • 黒板やノートによる従来のアナログスタイルとICT教育、それぞれの長所を組み合わせた授業デザイン
  • 英語教育でフィリピン講師と遠隔授業を実施
  • プログラミング教育は総合学習の時間だけ行うのでなく、さまざまな教科にプログラミングを取り入れて実施

    

「校務や授業で ICT 活用に悩む先生」のためのセミナーに登壇。

ICT教育のトップランナーとして、各種セミナーにも登壇しています。日本マイクロソフト社が主催するセミナーでは草津市立志津小学校の西村陽介先生が登壇し、他校の教員とセッションを行いました。

西村先生はICT環境が整っていくなかで授業の質や学習の質が児童・生徒一人ひとりにどのように作用し、学びが深まるのかのデータ分析に取り組んでいます。

セミナーでは、「分析した結果を踏まえて各自に最適な学びの機会を検討し、授業の組み立ての改善につなげている事例」を共有しました。

    

New草津型アクティブ・ラーニングとは?

2020年度からは、これまでの「草津型アクティブ・ラーニング」を土台とした「New草津型アクティブ・ラーニング」をスタートさせました。GIGAスクール構想による1人1台端末の整備により、ICTをいつ・どのように使うか自分自身で考えながら個別最適に活用し、より質の高い主体的・対話的な学びにしていく取り組みです。

「New草津型アクティブ・ラーニング」では、教師は、個別最適な学びのまとめ役となり、さまざまな資質・能力の向上を図ります。子どもたちが能動的な学びができるよう育成することをゴールに見据えています。

 

草津市学校教育情報化推進計画 第 2 期計画(令和4年度~令和7年度)」

 

まとめ

  • 2014年 GIGAスクールに先駆けてICT教育を始動:
    • ・GIGAスクール構想に先駆け、2014年度から全校へのタブレット端末を導入

    • アナログとデジタルを融合したハイブリット教育「草津型アクティブ・ラーニング」を開始

  •  2019年「日本ICT教育アワード」で文部科学大臣賞受賞:
    • 「日本ICT教育アワード」で滋賀県草津市教員委員会の「ICT活用で『元気な学校』をつくる草津市の戦略9」が最高賞の文部科学大臣賞を受賞
  • 2020年 ICT教育のトップランナーとしての情報共有:
    • 全国ICT学校フォーラムで全国の教育関係者が草津小学校を視察

    • ICT教育の先駆者として草津市の小学校経論がセミナーに登壇

    • 「草津型アクティブ・ラーニング」を土台とした「New草津型アクティブ・ラーニング」で、より質の高い主体的・対話的な学びを実施

以上、滋賀県草津市のICT教育事例についてご紹介しました。

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