文部科学省も後押しするICT活用事例:
校則見直しプロジェクト

文部科学省も後押しする、ICTを活用した校則の見直し「校則見直しプロジェクト」が始まっています。
生徒に生まれつきの髪の色を証明させる「地毛証明書」の提出、「下着の色の指定」など行き過ぎた校則は、生徒の人権を侵害し、不登校の生徒を増やす一因として社会問題になっています。
文部科学省では、ブラック校則の見直しを盛り込んだ「生徒指導提要」の改訂を進め、民間の教育NPOでは生徒たちがICTを活用して主体的に校則を作るルールメイキングというプロジェクトを全国の学校でスタートさせているのです。
この記事では、校則DXともいえるICTを活用した校則づくりの実際を事例とともに紹介します。
(2023.08.05 初出 2023.06.16 更新)

文部科学省が提唱する校則見直しプロジェクトとは?

ICT活用事例

ここからは、文部科学省が提唱する「校則見直しプロジェクト」が生まれた背景と概要をご紹介します。

校則見直しプロジェクトが生まれた背景

文部科学省が提唱する「校則見直しプロジェクト」とは、理不尽な校則を学校が主体となって見直す試みです。また児童生徒や保護者の要請に基づいて見直しを実施するだけでなく、定期的な見直しも実施し、より過ごしやすい学校生活の実現を図ります。

2021年、NHKが全国の47都道府県の教育委員会に、公立高校の校則についてアンケートを行ったところによると、全国の4割の公立高校が校則の見直しを進めていることがわかりました。

教育委員会として、校則を「見直した」のは岐阜県や佐賀県など14、「見直す予定」が5と、都道府県の4割を占めました。見直しのきっかけとしてもっとも多かったのが、「世論の高まり」です。

都道府県の4割が公立高校の校則の見直しを進める(NHKニュース:Webページ)

文部科学省が推奨する校則の見直しのポイントとは?

文部科学省の具体的な取り組みは、ふたつあります。

まずは、2021年6月に文部科学省が発表した「校則の見直し等に関する取組事例について」と題する文書です。
全国の都道府県の教育委員会に向けて発表された校則の見直しを促したこの文書には、次のような内容が含まれています。

  • 校則は、教育目的を達成するために必要かつ合理的なものである必要がある
  • 校則に基づく指導を行うときは、児童生徒に内面的な自覚を促し、自主的に守らせるように指導する
  • 校則の内容や必要性について児童生徒と保護者が理解していることが求められる
  • 学校を取り巻く社会環境や児童生徒の状況は変化するため、校則も実情や時代に合わせて積極的に見直す必要がある
  • 校則の見直しは最終的な責任は校長が負うが、児童生徒による話し合いやPTAへのアンケートなど、何らかの形で児童生徒と保護者が関わることができる
  • 校則の見直しは児童生徒の主体性を培う機会にもなる

校則の見直し等に関する取組事例について(文科省:Webページ)

文部科学省の生活指導提要に追加される校則に関する項目とは?

文部科学省の新しい「生活指導提要」にも、ブラック校則の見直しを目的にした校則に関する内容が盛り込まれる予定です。生徒指導に関する学校・教職員向けの基本書である「生活指導提要」は、2022年中に改訂が見込まており、想定される校則の見直しに対するルールは、次のようなものです。

  • 校則を学校のホームページで公開する
  • 校則を制定した背景を明らかにする
  • 児童生徒や保護者の意見を反映して見直しするための手順を明示する

ICTを活用した校則づくり、ルールメイキングとは?

ルールメイキングとは、ICTを活用した「生徒の生徒による生徒のための校則プロジェクト」です。ここからは、さまざまな教育支援に取り組む認定NPO法人カタリバが提唱するルールメイキングについてご紹介しましょう。

ルールメイキングとは

ルールメイキングとは、高校生を対象にした認定NPO法人カタリバが提唱し、2019年から始まったプロジェクトです。
ICTを活用して「生徒たちが主体となって校内のルールを作り上げる」点が、「主体的な学び」を理念に掲げる文部科学省のGIGAスクール構想ともリンクします。また、ルールメイキングでは校則を変えることよりも、対話を重ねること、納得解を作っていくプロセスを重視しているのもユニークな点です。

ルールメイキングは、2020年度に、実験的に3校で取り組みを行うところからはじまりました。年々、ブラック校則に関する社会の関心も高まり全国の学校で校則を見直すプロジェクトが始まり、2022年10月時点では全国160を超える学校や教育委員会が参加しています。

「みんなのルールメイキング」は、生徒が中心となり先生や関係者と対話しながら校則・ルールを見直していく取り組みです。立場や意見の違う人たちと、対話から納得解をつくるプロセスを大切にしています。この経験を通して、身の回りの課題に気づき、当事者意識をもって行動する力や、社会参画への意識を高めていくことを目指しています。

みんなのルールメイキング | 活動紹介(認定NPO法人カタリバ:Webページ)

従来の校則の検討とルールメイキングとの違い

カタリバでは、これまでの校則の検討をルールガードと名付け、ルールメイキングの違いをこのように表しています。

これまでの校則検討(ルールガード)

  • 教員に正しさがある。生徒は決められたことを守る
  • 生徒は校則を疑うことがなく、それに従うことが当たり前
  • 社会に正しさがある

これからの校則検討(ルールメイク)

  • 教員も、正しさを探る。ひとりの考えではなく、多様な視点から校則を考え直す
  • 生徒自身が過ごしやすい、かつ、誰一人、取り残されない共通項を探る
  • 学校や生徒の目指すところを共有し、ともにあるべき姿を探る

つまりルールメイキングのポイントは、生徒が主体となり、さまざまな立場の人々と話をしながら、対話から生まれる納得解をつくるプロセスにあります。これこそ、まさに文部科学省が提唱する「アクティブラーニング(主体的な学び)」の好例だといえるでしょう。

学校内におけるルールメイキング(校則検討)の取り組みは 高信頼性組織形成に寄与できるか?(認定NPO法人カタリバ:PDF)

みんなのルールメイキング(YouTube)

泉大津市立小津中学校のICT×ルールメイキング事例

ルールメイキングイメージ

ここからは、ICTを活用してルールメイキングに取り組んでいる大阪府泉大津市立小津中学校での事例を紹介します。

ICTを活用して、他校と交流

大阪府の泉北に位置する泉大津市立小津中学校は、経済産業省「未来の教室」の全国11校の実証事業校として、2021年から、生徒主体の校則見直し「みんなのルールメイキングプロジェクト」に取り組んでいます。

実証事業校のなかでも、公立中学校は、同校と岐阜県の大垣市立東中学校の2校のみ。両校は、ICT端末を活用して、それぞれの進捗などを報告しながら、刺激を受けたり、励ましあったりしています。

制服やICT端末の使用ルールの見直し

同校では、生徒会と有志の生徒約20人が「ルールメイカー」とにって、プロジェクトを主導していきます。

2021年度は、全校クラス会議で改善を求める声が大きかった制服やICT端末の使用ルールの見直しをはじめています。なかでも2022年6月現在は、標準服のブレザーをオリジナルで作り上げるというプロジェクトが具体的に進められています。

NPOや有識者の支援を受けながら、基本的には生徒たちが主体的に教員や地域住民、とくには保護者と対話を重ねながら案を練り上げて、一歩ずつ、着実に歩を進めています。

泉大津市立小津中学校(Webページ)

校則見直しプロジェクトで期待できる効果

生徒たちが主体的に校則見直しの活動を行うことで、校則だからと言い訳をするのではなく、生徒が自分の行動や言葉に責任を持つようになることが期待できます。

また、自発的に考える習慣が身につくことで、次のような効果も期待できます。

  • 主体的に話し合いに取り組むことができるようになる
  • 自発的に課題に気が付く
  • 積極的に自分の意見を主張できるようになる
  • 地域の方々とも対話しながら活動を進めることで、社会性が身につく

ICT教育の課題

ICTを活用して主体的な学びを促すことには、たいへん意義深いことですが、その一方、次のような課題があります。

  • ICT端末の管理で教員の負担が増大
  • セキュリティ対策やリテラシー教育の必要性

ICT活用をより広く、深く進めるには、教員の負担を軽減する仕組みの構築も同時に行う必要があります。

まとめ

  • 文部科学省が提唱する「校則見直しプロジェクト」:
    理不尽な校則を学校が主体となって見直す試み。
  • ルールメイキングとは:
    ルールメイキングとは、ICTを活用した「生徒の生徒による生徒のための校則プロジェクト」。2022年10月時点では全国160を超える学校や教育委員会が、参加。
  • ICT教育の課題:
    • ICT端末の管理で教員の負担が増大
    • セキュリティ対策やリテラシー教育の必要性

以上、文部科学省が提唱するICT活用事例「校則の見直しプロジェクト」について事例を交えてご紹介しました。

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参照元

  • 校則の見直し等に関する取組事例について(文科省:Webページ)