ギフテッド教育とは?
効果的なICT活用方法や遠隔(オンライン)サービスも紹介。
「ギフテッド」(Gifted)とは、生まれつき突出した才能のある人物を形容する言葉で、近年では、この特性を持つ子どもに向けて、個々の能力を尊重したギフテッド教育が注目されています。
生まれつきギフトを授かった(Gifted)子どもたちは、その能力ゆえに画一的な教育指導や仕組みに馴染めず生きづらさを感じることも少なくありません。ギフテッド教育は、そのような子どもをサポートしながら、個々の才能を伸ばしていきます。
ギフテッド教育には、ICT端末を活用したオンライン学習との相性が良く、今後もICT教育を前提とした導入が進んでいくことが予想されます。
この記事では、ギフテッド教育の概要と、この教育と相性の良いICT活用、遠隔(オンライン)学習サービスについてご紹介します。
ギフテッド教育とは?
ギフテッド教育とは、天からの贈り物であるギフト(Gift)をもらった、つまり並外れた能力を持つ子どもを対象とした教育方法です。
ここからは、ギフテッド教育の概要についてご紹介しましょう。
ギフテッド特性とは?
ギフテッド(Gifted)とは、生まれつき突出した才能を持つ人物を表します。最近では、そうした突出した能力をもつ子どもに対して用いられることが多いため、教育用語のひとつとしてとらえられています。
ギフテッド能力を図る指標として有名なのは、児童を対象とした国際的な知能検査「WISC-IV」で、「IQが130以上」あるとギフテッドとみなされます。
ただし指標はIQだけに限らず、「芸術」「言語」「数学」など、特定の分野に高い能力や思考能力、優れた記憶力などがある場合、ギフテッドとされ、その特性を伸ばしていく特別な教育をギフテッド教育と言います。
ギフテッド教育の特長
ギフテッド教育は、ギフテッドの子ども一人ひとりの能力や学習ペースに合わせてカリキュラムを進めるプログラムです。主な目的は、次の2点です。
- ギフテッドの才能を適切に伸ばす
- 生きづらい側面を適切にサポートする
突出した才能を伸ばしながら、一方、「社交性に欠ける」「得意分野以外の能力習得が遅れがちになる」といったギフテッド特有の問題をサポートすることもギフテッド教育の大きな役割です。
これまでよく使われていた類語として、ギフテッド≒「天才」、ギフテッド教育≒「英才教育」がありますが、ギフテッドが従来の言い回しと異なる点は、かれらが抱える課題にも対応するというところでしょう。
ギフテッドは何人にひとり?
ギフテッドの子どもは、どのぐらいの割合で存在するのでしょうか?
IQを指標に考えると、IQ130以上の出現率は2%と言われています。この数値に基づくと「50人に1人の割合で、ギフテッドの子どもが存在する」と考えられます。
一方、ギフテッドの児童・生徒には自閉症スペクトラムや、ADHD(注意欠如・多動症)やLD(学習障害)などの発達障害を併せもつケースも少なくありません。このような場合は「特異な才能」という意味で2E(Twice-Exceptional)と表されます。
日本でのギフテッド支援の動き
ギフテッド教育の先進国はアメリカですが、日本でも、民・官ともに取り組みが始まっています。
2021年には、文部科学省が「特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議」を立ち上げました。
翌2022年には、同会議が、特異な才能のある児童生徒への指導・支援についての考え方や実現のために取り組むべき施策を総括した「審議のまとめ」を公表しています。
特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議 審議のまとめ
ギフテッド教育とICT活用
ギフテッドの子どもたちは、能力が特出しているがゆえに、画一的な教育システムからはみ出したり、不登校となったりするケースも少なくありません。文科省の有識者会議では、このような問題を解決するために、ICTを活用することを推奨しています。
ここからは、文科省の有識者会議で報告されたギフテッド教育におけるICT活用の効果についてご紹介しましょう。
ICTを活用して、ギフト(才能)を伸ばす
ギフテッドの子どもたちの授業にICTを活用すると、ひとつのジャンルに強い知的好奇心を示す子どもに対して、そのニーズに応じた学習を行うことができます。
たとえば、学校外の信頼できる機関が提供するゲーミフィケーションのような専門的な教育プログラムを活用すれば、子どもたちの才能を伸ばすことに役立ちます。ICT端末を活用すれば、これまでは簡単にはアクセスできなかったリソースに、いつでもどこからでもつながることができるようになるのです。
ICTを活用して、苦手を支援する
ギフテッドのなかでも、2E の児童・生徒にとっては、特別支援学級の児童生徒同様、ICTを活用することで障害に伴う困難を軽減したり、場合によっては解消したりすることも可能になります。
たとえば、ICT端末を活用することで、児童の得意な方法に合わせて問題の記述方式を選択できるようにしたり、読み書きが困難な児童・生徒へ支援したりすることが可能となります。
また、端末のアプリを通して、友人関係を築いたり、教師間、スクールカウンセラー、学校司書との情報共有が可能になり、学校生活を円滑に送ることができるようになったという事例が報告されています。
ギフテッド教育を受けた子どもたちの声
ICT活用を含めたギフテッド教育を受けた子どもたちからは、次のような生の声が届いています。
「正しい答えだけでなく、『なぜ、そのように考えるのか』、考え方を発表させてくれた先生のクラスは非常に楽しかった」
「自己肯定感が低いので、自信を付けさせる声かけをしていただいたことが有効だった」
「理解が得られ教師との信頼関係を築くことができ、教師のフォローで誤解されることも少なくなり自信を取り戻し前向きになれた」
遠隔によるギフテッド教育サービス
ギフテッド教育は、国内でも少しずつ浸透してきており、関連サービスも増えています。なかでも、通常のクラスに馴染めず不登校になるギフテッドの子どもをサポートする遠隔教育(オンライン学習)が注目されています。
ここからは、遠隔(オンライン)でギフテッドを支援する国内のサービスをご紹介しましょう。
翔和(しょうわ)学園
東京都中野区にある翔和学園は、発達障害をはじめ困難を抱える子どもたちに特別支援教育を実施する特定非営利活動法人です。
コロナの感染症対策を機にオンライン学習をスタートさせた同学園では、2023年現在でも、オンラインとオフラインとを組み合わせた「ハイブリッド教育」を実施。いくつかあるカリキュラムのなかで、発達障害と高いIQを併せ持つ、ギフテッドのなかでも2Eと呼ばれる子どもたちの能力を伸ばすことを重視したプログラムも提供しています。
ギフテッド教育のプログラムでは「学習活動タイム」「身体運動」「プロジェクトタイム」の3つを用意し、ギフテッドの子どもたちの「生きていく気力」を育て、安定して継続的な社会参加を目指しています。
sprinG(スプリング)
sprinG(スプリング)とは、特定非営利活動法人日本教育再興連盟が2022年度に開始したプロジェクトです。ギフテッド特性があり、学校や社会への馴染みづらさを抱える小・中学生と保護者に向けた居場所づくりに取り組んでいます。
児童精神科医や特別支援教育を専門とする大学講師などの専門職と、教育に志のある大学生が中心となって運営しています。
「お子さま向け事業」「保護者さま向け事業」の2つを軸に展開しており、「お子さま向け事業」ではオンライン上のバーチャル空間を利用して子どもたち同士がつながる機会を設け、居場所づくりを行っています。
さらに、無学年式教材「すらら」を使った個別支援も行っており、学習の進捗を確認して一緒にスケジュールを立てるサポートも行っているのが特徴です。
また、「保護者さま向け事業」ではオンラインコミュニティを設け、悩みごとや発見の共有など、情報交換の場を提供しています。
「KIDS ACADEMIA」
「KIDS ACADEMIA(キッズ・アカデミア)」は、愛媛大学教育学部が監修する幼児・児童向けの教育プロジェクトです。2010年、特定の学問分野に長けている子どもの能力を見いだし、伸張する学習プログラムを開発・実践するためにスタートさせました。
オンラインセミナーのほか、体験学習やコンテストなどのプログラムで、ギフテッド教育についての最新動向の紹介やミニ講義をオンラインで提供しています。
不登校の子どもを対象にしたオンライン学習・遠隔教育については、次の記事もご参照ください。
不登校の子をオンライン学習で支援!不登校支援サービスをまるっと紹介
まとめ
- ギフテッド特性とは?:
- 「IQが130以上」あるなど、特定の分野に高い能力がある人物。
- 高いIQと同時に自閉症や発達障害などを併せ持つ2Eも多い。
- ギフテッド教育とは?:
- 突出した能力を育み、一方、その能力ゆえの生きづらさを支援する教育。
- ギフテッド教育におけるICT活用:
- ICTを活用して、ギフト(才能)を伸ばす。
- ICTを活用して、苦手を支援する。
- 遠隔によるギフテッド教育サービス:
以上、ギフテッド教育の概要と、ギフテッド教育と相性の良いICT活用、遠隔教育についてご紹介しました。
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