2023.06.09 (金)

【ICT事例】
教育県・大分県の「個別最適な学び」と「協働的な学び」。

ICT教育の両輪といえば、「個別最適な学び」と「協働的な学び」でしょう。児童・生徒一人ひとりの多様性に合わせた指導を行う「個別最適な学び」と、幅広い人々と共有、交流することで新しい気づきを得る「協働的な学び」には、ICT端末の活用が大きな役割を担います。
この記事では、「個別最適な学び」と「協働的な学び」を実現した大分県のICT事例をご紹介します。GIGAスクール構想以前から情報教育に注力し、2023年現在は860万再生を記録したYouTubeチャンネルを運営する教育県・大分県のICT事例が豊富に紹介されているポータルサイトも、合わせてご紹介します。

 

ICT教育と「個別最適な学び」「協働的な学び」の密接な関係。

 

「個別最適な学び」は、「協働的な学び」と並び、新学習指導要綱の中核をなす考え方です。

「個別最適な学び」の事例をご紹介する前に、このふたつの学びとICT教育の関係について、おさらいしておきましょう。

 

「個別最適な学び」とは?「協働的な学び」とは?【おさらい】

「個別最適な学び」と「協働的な学び」は、次のように定義されています。

 

  • 個別最適な学び:児童・生徒の個性や習熟度に応じた学習方法。

【個別最適な学び】GIGAスクールが目指す教育の理想形とは?

  • 協働的な学び:クラスメイトや地域など他者と交流することで、新しい発見を得る学習方法。

協働的学びって、どんな授業?教科別・協働学習の具体例紹介。

この2つの学びが目指すところは、新学習指導要綱の掲げる「主体的・対話的で深い学び」(アクティブラーニング)であり、変化の激しい時代に対応するための問題解決能力を育む学習と言えます。

アクティブ・ラーニングとは?学習プランから活用例までわかりやすく解説!

 

「個別最適な学び」「協働的な学び」で、ICTはどのように活用されているか?

「個別最適な学び」と「協働的な学び」における、ICT端末の活用例をご紹介しましょう。

  • 個別最適な学び:

・児童・生徒の習熟度に合わせて、ドリルアプリを使って反復学習を行う。

・動画を見ながら予習する。

・音声アプリを使って、ネイティブスピーカーの音声を聞く

・学習ログから、児童・生徒の離脱するポイントを確認し、その個性に合わせた指導を行う。

そのほか、教科別の活用例は、次の記事をご参照ください。

タブレット学習のおすすめ活用例 ―小学生編―【主要5教科】

タブレット学習のおすすめ活用例 ―小学生編―【そのほかの教科】

 

  • 協働的な学び

・学校外の地域や、海外も含めた遠隔地の他校と交流を図る

・写真やイラスト、動画など、視覚、聴覚の資料を活用し、仲間と五感を共有する。

そのほか、教科別の活用例は、次の記事をご参照ください。

協働的学びって、どんな授業?教科別・協働学習の具体例紹介。

 

「個別最適な学び」が求められる背景 

「個別最適な学び」そのものは、江戸時代の寺子屋を見てもわかるとおり、決して新しい学習手法ではありません。

上智大学教授・奈須正裕氏は、2021年に開催された「New Education Expo2021 東京」の講演において、個別最適な学びのルーツについて次のように発言しています。

「それまで寺子屋や私塾で行われていた個別指導は、アメリカからもたらされた学級単位の一斉指導へと変化した。一斉指導は教師の指導効率や経営上の費用効率を高めることには役立つが、発達の度合いが異なる早生まれと遅生まれの子どもに同じように学ぶことを求めるため無理も生じる」

引用:「個別最適な学び」と「協働的な学び」の実現で、子どもの学びはどう変わる?

近代の学校教育の問題点を踏まえ、教師たちによる、子ども一人ひとりの要求に根ざした個性的な学習の機会を求める動きがあり、そうした改革が「個別最適な学び」に結実したと解説しています。

 

教育県・大分県のICT活用

大分県は、GIGAスクール構想以前からICT教育を推進し、「教育県大分」を基本的理念に掲げて、さまざまな施策を行っています。

GIGAスクール構想、2022年度の現在地。基本から事例まで【わかりやすく解説】

なかでも、2010年からスタートした学校の取り組み事例を紹介するYouTubeチャンネルは、計860万再生を超える人気コンテンツへと成長しました。

ここから、「個別最適な学び」はじめ、ICTを積極活用する大分県教育委員会の事例をご紹介しましょう。

教育県・大分県による「 ICT活用教育推進プラン」とは

大分県教育委員会は、2013度から毎年「大分県教育情報化推進戦略」を策定しており、ICT教育を推進。GIGAスクール構想以前の2016年3月には「大分県教育情報化推進プラン2016」を、コロナ禍の2020年には「ICT活用教育推進プラン2020」を策定し、ICT教育に取り組んでいます。

さらに、2022年には、これまでの取り組みの成果や課題、国の動向などを踏まえた3年間の計画書「ICT活用教育推進プラン2022」も策定しています。

 

「ICT活用教育推進プラン2022」における4つの基本方針は、次のようなものです。

基本方針1:子どもたちの情報活用能力の向上

基本方針2:教員のICT活用指導力の向上

基本方針3:教育の情報基盤の整備

基本方針4:教育の情報化に向けた体制整備

ICT活用教育推進プラン2022

1人1台端末を効果的に活用した 個別最適な学びと協働的な学びの実現に向けた授業改善

 

860万再生を誇るYouTube「大分県教育庁チャンネル」とは?

2010年、大分県教育委員会は、県全域の学校現場におけるさまざまな取り組みを紹介するYouTubeチャンネル「大分県教育庁チャンネル」を開設しました。

県庁の広報活動の一環として始まった取り組みで、教育現場での教師や子どもたちの横顔と地域の支援の様子を生き生きと映し出し、人気コンテンツと成長しました。

このチャンネルは、「視聴者の声を聞きながらシリーズの企画を考える双方向性」があり、「専門スタッフが動画制作に携わっているため視聴者のニーズに沿った質の高い動画を制作できる」ことが特色です。

2023年4月時点で、チャンネル登録者数は1.5万人を超え、350以上の動画コンテンツがあり、その再生回数のトータルで860万回を超えています。

大分県教育庁チャンネル

 

大分県「ICT活用授業&探究ライブラリポータルサイト」

また大分県教育委員会ではGIGAスクール構想の推進に合わせ、ICTを活用した授業と、探究的な学びの参考となるポータルサイト「ICT 活用授業&探究ライブラリポータルサイト」も開設しました。

視覚的に見やすさを意識した洗練されたポータルサイトです。

ICT活用授業の優良事例のコーナーでは、小・中学校、高校、特別支援学校別にを紹介し、具体的な事例が豊富に掲載されています。事例にはハッシュタグを入れて、タグから検索することもできるようにするなど、最新のユーザビリティに沿った構築を行っています。

また探求的な学びの実践事例では、主に高校で行われている探求学習から、普遍性のあるテーマを取り扱ったものを紹介しています。

ICT活用授業&探究ライブラリポータルサイト

特別支援学級のタブレット活用、基本機能3選×学習アプリ7選。

探究学習のテーマはどう決める?選び方のポイントとテーマ4例。

 

大分県、ICT活用事例2選

大分県の「活用授業&探究ライブラリポータルサイト」には、数多くの事例が掲載されています。

そのなかから、「個別最適な学び」を実践する2つの事例を紹介します。 

ICT事例① 震災復興の願いと取り組み:豊後高田市立田染小学校6年

  • 教科:社会
  • 使用したICT機器・ツール:タブレット・モニター・学習支援ソフト

(授業内容)

豊後高田市立田染小学校の6年生は、「災害復興」というテーマで、国・県・市・人々という4つの観点から考えを深めていきました。それぞれは、災害復興に向けてどのような取り組みを行ったか、どのような相互関係にあるのかを生徒個人で考え、その後、グループに分かれてチャートにまとめていきます。

「ロイロノート」の共有ノートを活用し、観点ごとに取り組みを整理し、ほかの生徒のプレゼンを聞いて交流したことをもとに政治や街づくり、支援などのキーワードでまとまりを作ります。

共有ノートの「全員がひとつのノートで共同作業ができる」という特色を活かし、子どもたちは一人ひとり考えを深化させてから、プレゼンを行いました。

この事例では、ひとつのトピックをもとに、「個別最適な学び」と「協働的な学び」を体験できる手法が盛り込まれています。

震災復興の願いと取り組み:豊後高田市立田染小学校6年

ロイロノートの年度更新のポイントとは?よくある質問をわかりやすく解説

 

ICT事例② 個人の尊重と公共の福祉:佐伯市立直川中学校3年

  • 教科:公民的分野、社会
  • 使用したICT機器・ツール:タブレット・モニター・指導者用デジタル教科書・学習支援ソフト

佐伯市立直川中学校の3年生は、公民教科書掲載の「青果店を営む男性はどうなる?」を題材に、個人の尊重と公共の福祉について考える授業を行いました。

「資料を読み取ること」と「複眼的な視点を取り入れる」ことを意識しながら意見を交わし、自分の考えを再構築して表現すること」がゴール。自分の考えを表現するために、iPadや電子黒板、ロイロノートなど、ICTを活用しました。ICTを活用して「自分の考えを再構築する」を実現しました。

この事例のように、正解を求めるのではなく、考えを深めることこそが本質である公民の授業は、ICT教育に最適です。また、個人の考えを深めるために用途に合わせて複数のICT端末を活用しているところも、ポイントといえるでしょう。

個人の尊重と公共の福祉:佐伯市立直川中学校3年

 

まとめ

  • ICT教育と「個別最適な学び」「協働的な学び」の密接な関係。:
    • 個別最適な学び:児童・生徒の個性や習熟度に応じた学習方法。
    • 協働的な学び:クラスメイトや地域など他者と交流することで、新しい発見を得る学習方法。
  • 教育県・大分県のICT活用:
    • GIGAスクール構想以前から、県をあげて情報化を推進
    • 860万再生を誇るYouTube「大分県教育庁チャンネル」を運営
    • 「ICT活用授業&探究ライブラリポータルサイト」」を開設
  • 大分県、「個別最適な学び」事例2選:
    • 小学6年生の「震災復興の願いと取り組み」
    • 中学3年生の「個人の尊重と公共の福祉」

 

以上、「個別最適な学び」と「協働的な学び」を実践した大分県のICT事例をご紹介しました。

 

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