学校端末に欠かせないMDMサービスを事例で紹介。
運用時のポイントも。
MDM(Mobile Device Management:エムディーエム)とは、学校や企業などで複数のモバイル端末を一括で管理するシステム。フィルタリング設定など端末の一括管理や、アプリのバージョン管理など、幅広い機能によりICT教育を効率化するサービスで、学校におけるICT教育に欠かせないサービスとして注目されています。
この記事では、学校端末に使えるMDMの基本機能とMDMサービス導入事例、さらに運用のポイントについてご紹介しました。
学校におけるMDM導入の目的は?
学校のICT教育で活用する端末にMDMを導入する目的は、端末管理に関する担当教師の負担を軽くするためです。一括管理や遠隔による管理・監視など、それぞれの機能を詳しくご紹介しましょう。
学校端末にMDMサービスを導入する目的は?
学校で活用するICT端末にMDMサービスを導入する目的は、教職員の負担軽減にあります。学校端末の管理は、教職員に大きな負担を強いる業務のひとつであり、MDMサービスの導入で、その負担を軽減することが期待できます。
MDMとは「Mobile Device Management」の略です。直訳すると「モバイルデバイス管理」となり、スマートフォンやタブレットなどICT端末を一元的に管理できるサービスを指します。
MDMサービスを導入すると、次のような管理ができるようになります。
- 端末の一括管理(フィルタリング設定、アクセス制御)
- OSやアプリのバージョン管理
- アプリ導入の権限の設定
- Wi-Fi環境の設定
- 遠隔管理(盗難、紛失時の対応)
学校で役立つMDMの代表的な機能
MDMには、多くの機能があります。ここからは、学校で利用する際に便利な「セキュリティポリシーの設定」や「端末の一括管理」などMDMの代表的な機能をご紹介しましょう。
全校生徒のOSのバージョンを揃えたい → ポリシーの設定
MDMでは、さまざまな「ポリシー設定」ができます。
MDMにおける「ポリシー設定」とは、
- 更新プログラムやウイルス対策ソフトのインストール
- サービスやOSのセキュリティ設定、禁止事項の設定
など、端末にルールを付与することです。
MDMのポリシーの具体的な活用方法としては、学校端末のOSのバージョンを揃えるときなどに便利です。OSのバージョンを揃えることで、生徒によって使える機能に隔たりが出ないようにしたり、セキュリティ対策をしたりすることができます。
年度更新で、アカウント設定を行いたい → 端末の一括管理
MDMでは、「複数端末を一括管理」して初期設定などを実行できます。
学校で使用する端末は、全クラス、全学年、全校生徒など大量の端末に対して行うことがほとんどです。ですから初期設定や設定の変更を一括で管理できる機能は、大幅な時短につながります。
とくに学校における端末管理には、年度更新(年次更新)がつきものです。
- 年度更新(年次更新)におけるアカウントの一括設定
には、このMDMの機能が役立ちます。
そのほか、
- USBで接続できる外部記憶装置の利用の禁止
など、学校端末の学習以外の利用を防止することもできます。
有害なWebサイトを排除したい → アプリケーション管理
MDMの「アプリケーション管理」の機能を活用すると、学校端末にインストールされているアプリを管理できます。
MDMの「アプリケーション管理」には、
- アプリのインストールやアップデート
- 特定のアプリケーションの利用禁止
- Wi-Fi接続の設定やホワイトリストによるWi-Fiフィルタリング
- Webフィルタリングの設定
などの機能も備わっています。
また、アプリごとのアクセス制御も可能です。有害サイトへのアクセスを禁止するだけでなく、
- 授業中のみYouTubeアプリが利用できるようにしたい
といった細かな設定が可能です。
端末を紛失した → 遠隔操作
MMDMの「遠隔操作」機能は、学校端末の紛失・盗難時に役立ちます。
MDMの「遠隔操作」機能では、
- 端末をロックして使用できない状態に設定する
- 端末の情報をすべて削除する
ことができます。
サービスによっては、「パスワードを一定の回数以上間違えるとデータを消去する」機能や、「データを暗号化して第三者による情報の窃取を防止する」機能もあり、セキュリティ対策も実行できます。
2022年現在、ICT端末の持ち帰りの実施は、学校や自治体によって異なりますが、端末を持ち帰る場合の紛失や盗難のリスク対策としても、MDMは役に立ちます。
学校向けMDMサービスの事例紹介
MDMは、各民間企業から、さまざまなサービスが提供されています。ここからは、実際に学校で導入されているMDMサービスを比較してみましょう。
mobi-connect
MDMサービス、mobi-connectは、教育現場で実績のある国産MDMサービスです。
迅速で簡単な操作性とともに、学校で役立つオプションが用意されています。オンライン相談室を設けており、操作方法や活用のアドバイスを無料で受けることができます。
- 対応OS:iOS、Android、Windows、MacOS
- mobi-connect
MDM導入事例:岩田中学校・高等学校
大分県大分市の岩田中学校・高等学校は、2019年度からiPadによる1人1台のICT教育を本格的に開始しています。MDMサービスのなかでもmobiConnectを導入した理由は、コストパフォーマンスと、サポートのレスポンスの早さにありました。
MDMサービス、mobiConnectの導入によって、同校では、次のようなICT教育を実現しています。
- アクティブ・ラーニングの実現
- 学校と家でiPadを日常的に使うツールにする
- 双方向性のある新しい学びの実施
- コロナ禍でも、遠隔操作により、オンライン学習を続けることができた
Optimal Biz
MDMサービス、Optimal Biz は、GIGAスクール構想の運用に最適なサービスとして注目されています。
最大10階層、3000グループまでの組織設定ができ、グループごとに権限管理ができます。
持ち帰り学習を実施している学校に対しては、端末やアプリの使い方についての遠隔サポートを実施しています。
- 対応OS:iOS、Android、Windows、MacOS
- Optimal Biz
MDM導入事例:瀧野川女子学園中学高等学校
東京都北区にある瀧野川女子学園中学高等学校では、2015年度から中学1年~高校 1年の全生徒にiPadを配布し、配布と同時に、MDMサービス、OptimalBizも導入しました。
OptimalBizの導入で、次のようなICT教育を実現しています。
- Webフィルタリングの仕組みを構築してセキュリティの問題発生を事前に防止
- SNSアプリのインストール禁止
- 紛失・盗難に備え遠隔からデバイス内のデータをすべて消去できる機能を装備
Jamf(ジャムフ)
MDMサービス、Jamf(ジャムフ)は、Apple製品に特化したサービスです。
Appleの自動登録を活用して専用サーバーへの端末登録が自動化され、初期設定がすぐに完了します。
導入時の構築のサポートを行う有料サービス「Jump Start」も提供しており、技術認定を受けた専門家がMDMの構築をサポートします。
- 対応OS:macOS、iOS、iPadOS、tvOSなどApple社製品
- Jamf Pro
MDM導入事例:北鎌倉女子学園中学校・高等学校
神奈川県にある北鎌倉女子学園中学校・高等学校は、全校生徒1人1台のiPadやICTルームのMacBookを活用し、創造的な学びを進めています。
同校では、500台に及ぶ端末管理に、MDMサービス、Jamfを導入。Jamf はApple端末専用のため高い品質を保ちやすく、同校ではシステムが停止して利用できないといったトラブルがほとんど発生していません。
2019年12月には同校は、 「Apple Distinguished School」に認定されました。これは、Appleのビジョンを実践する「先進的な教育機関」として認定されたことを意味します。
MDMサービス、Jamfの導入によって、同校では、次のようなICT教育を実現しています。
- OSの設定やアプリ配信などすべての操作を教諭がその場で実行でき、学びを止めずICT教育の効果を最大限に発揮
- 操作が簡単で簡単にアプリの配信ができる
- 3日間で管理方法を学ぶマンツーマンの「JumpStart導入研修」充実した管理を実現
MDMサービスの運用時ポイント
MDMサービスを導入する際は、トラブル時の対応や単純作業にかかる教職員の負担など、いくつか注意したい点があります。ここからは、MDMサービスの運用時に注意したい点についてみてみましょう。
学校端末のトラブルに対応できる人材が確保できているか?
学校端末に故障や盗難など、予期せぬトラブルが発生したとき、ICTの知見のある人材が必要です。
学校で対処できない場合には、MDMサービスに問い合わせる、ICT支援員に依頼する、など、学校によっていくつかの選択肢があります。さらに各校を巡回するICT支援員が不在な時には、どのような対応をするか、など、非常時の対応まで含めて、事前に準備しておくことが必要です。
MDMを導入することで、むしろ教師の負担が増えていないか?
本来、教職員の負担を軽減するために導入するMDMサービスであるはずが、その設定をすることで逆に負担が増えてしまっては本末転倒です。
MDMサービスの設定はICT支援員が担うのが一般的ですが、支援員の人材不足に加えて、端末数、イコール全校生徒数と考えると、何百台というバルク(Bulk:大量)対応が必要な学校端末の初期設定にはマンパワーが必要です。
「全校生徒の端末に同じフィルタリング設定を行う」「全校生徒の端末のOSのバージョンを同じにする」など、ひとつひとつの作業は単純であっても、生徒数に応じた端末に対して設定することの負担は大きいものです。
この場合も、MDMサービス提供企業に有料オプションのような設定サービスがあるか聞いてみましょう。また、ICT支援員のマンパワーが不足している場合は、民間のヘルプデスクに依頼するという解決策もあります。
まとめ
- MDMの主な機能:
- 全校生徒のOSのバージョンを揃えたい → ポリシーの設定
- 年度更新で、アカウント設定を行いたい → 端末の一括管理
- 有害なWebサイトを排除したい → アプリケーション/コンテンツ管理
- 端末を紛失した → 遠隔操作
以上、学校端末に使えるMDMの基本機能とMDMサービス導入事例、さらに運用のポイントについてご紹介しました。
もしMDMのサービスの運用に不安がある場合は、ICT支援員に相談するのが解決の早道です。ただし、ICT支援員は慢性的な人手不足に加えて、複数の学校を巡回するため、校内に常時待機しているわけではありません。
ICT支援員不在時に気軽に問い合わせできるところから、ICT支援員に加えてヘルプデスクを併用する学校も少なくありません。
ヘルプデスクは、対面ではなく、メールや電話が基本となりますが、多岐にわたるICT業務について気軽に問い合わせできるのがメリットです。
KDCのヘルプデスクには、ICT支援員やシステムエンジニアなどICTのプロフェッショナルが常勤しており、端末のトラブル対応からアプリの基本操作まで幅広く支援します。
たとえば、Jamfのような外資系サービスを利用している場合も、KDCでは日本人スタッフが、万全の体制でサポートします。
- ログインできない
- 電源がつかない
- アプリの操作がわからない
という、ちょっとしたお困りごとから、
- 全校生徒分のアプリをインストールしたい
- OSの最新バージョンを全校一斉にアップデートしたい
- 起動しないアプリを点検して、再インストールしたい
といった教育の現場で大量に発生する業務にも対応しています。
KDCは「電話がつながるヘルプデスク」として、電話応答率が90%以上、簡単なお問い合わせであれば数分で解決へ導いてきた実績があります。
メールからのお問い合わせにも、受付時間内であれば、平均1時間以内というスピード感で応答します。
ICTのお困りごとは、ぜひ、KDCのヘルプデスクにご相談ください。
参照元
- MDMとは【ひとことで言うと?教育ICT用語】(リセマム:Webページ)
- 安心安全に子どもたちの学びを支援、ネットワールドのMDMとセキュリティ対策(リセマム:Webページ)
- MDM(モバイル端末管理)ツール5つの基本機能を解説!(ITトレンド:Webページ)