STEAM教育がもたらした、
兵庫県立加古川東高の地域活性化事例。
「STEAM(スティーム)教育」の本格導入に先駆け、兵庫県では、2020~2022年にかけて県内の3高等学校をモデル校に指定し、「兵庫型STEAM教育」を実践しています。この取り組みは、初年度から内閣府のコンクールで受賞するなど、早くも結果を出しています。
STEAM教育とは、科学技術と芸術の習得を通して、問題解決能力、論理的思考、チームワークを体験しながら学ぶ学習プログラム。21世紀型の教育メソッドとして、世界中の教育現場で取り組みが始まっています。
この記事では、兵庫県が取り組んでいる文理が融合した課題解決能力型STEAM(スティーム)教育の事例を紹介します。
【おさらい】STEAM教育とは何か?
事例をご紹介するまえに、STEAM教育の概要をまとめます。
STEAM教育は、何の略?
「STEAM(スティーム)教育」とは、21世紀の教育メソッドとして注目を浴びるプログラムです。
S(Science)+T(Technology)+E(Engineering)+A (Art)+M(Mathematics)「科学」+「技術」+「工学」+「芸術・教養」+「数学」
それぞれの頭文字を組み合わせて、フレーズをつくりました。
科学技術の発展に貢献する人材を育成する「STEM(ステム)教育」に対して、理系のカリキュラムに「ART」を加えたのが、「STEAM(スティーム)教育」です。
STEAM教育では、これまで分断されていたそれぞれの教科を横断的に学ぶことで、総合的な人材育成を図ります。子どもたちは、このカリキュラムを通して、科学技術の知見にとどまらず、問題解決能力、論理的思考、チームワークを体験しながら学んでいきます。
STEAM教育が求められる背景
この教育プログラムは、世界中で取り組みが始まっています。背景にあるのは、Society(ソサエティ)5.0と言われる、超スマート社会の実現に向けた人材育成です。
AIやビッグデータ、IoTなどを駆使した情報社会の一歩先にある、先進的な科学技術によって仮想空間と現実空間が融合した近未来社会の実現は、日本だけではなく世界中の重要課題です。
事態を真摯に受け止めているアメリカやイギリスなどは、国策としてSTEAM教育に取り組んでいます。
兵庫型STEAM教育とは
兵庫県教育委員会では、STEAM教育の本格始動にさきがけて、2020~2022年にかけて県内の3高等学校をモデル校に指定、実践しています。
県内からモデル校として選出されたのは、下記の高等学校です。
- 県立兵庫高等学校(神戸市)
- 県立加古川東高等学校(加古川市)
- 県立豊岡高等学校(豊岡市)
兵庫型STEAM教育の特長① 英語を加えた文理融合型である
兵庫型STEAM教育の特長は、STEAM教育の「科学」+「技術」+「工学」+「芸術・教養」+「数学」に、「英語」を加えている点です。
英語のネイティブスピーカーで、かつ、学士以上の学位を取得した人物を教員として採用し、本場の発音と生きた英語を学びます。校内には専門の学科を設置して、文理が融合したカリキュラム開発を行い、課題解決能力型の探究活動を行っています。
兵庫型STEAM教育の特長② STEAM先進国から教師も学ぶ
先進的な教育プログラムについて勉強が必要なのは、生徒ばかりではありません。兵庫県教育委員会は、教職員向けの研修会も支援しています。
コロナ禍により、オンラインというスタイルにはなりましたが、教育向けのIT研修の一貫として、オーストラリアのSTEAM教育から学ぶ研修が盛り込まれました。
兵庫県立加古川東高、STEAM教育の導入事例
兵庫県教育委員会が指定したSTEAM教育実践モデル校のなかから、加古川東高等学校の取り組みを紹介します。
歴史ある高校で実践されるSTEAM教育。
加古川東高等学校の前進は、1924年に創設された旧制加古川中学校。大正時代に設立された100年近い歴史のある同校で、STEAM教育という次世代の取り組みがなされたことは、意義深いものがあります。
加古川東高校は、モデル校として指定された2020年度から、理科と数学の教員3人を担当に任命しました。担当教師の業務は、STEAM教育のコンセプトに基づいた特別講座の企画です。
2020年度に開催された特別講座は、「ドローンを操ろう」「microbitで夢を創ろう」「3Dプリンタ」「加古川市の地域デザインを考えよう」など、タイトルを聞いただけでも魅力的な内容ばかり。
2020年度は計10回、翌2021年度は20回以上の特別講座を開催しました。
STEAM教育の成果が、内閣府のコンクールで認められる。
この特別講座の成果は、早くも翌2021年に現れます。
2020年度に開催された特別講座「加古川市の地域デザインを考えよう」をきっかけに、地元の産業について興味をもった同校の女子高生3人が、内閣府主催の「地方創生★政策アイデアコンテスト2021」において、見事、協賛企業賞を受賞したのです。
受賞した3人は、特別講座をきっかけに加古川市の人口動態や産業構造、人の流れなどのビッグデータを調査。加古川市には靴下という地場産業があるものの、実際に流通しているのはOEM製品が多く、「産地としての加古川」の認知度が低い点に着目しました。また、客観的なデータを分析することで、輸入品に比べた場合の強みも発掘。「価格は高いが、品質が良い」という加古川市のPRポイントをみつけました。
校内でアンケートを募ったり、生産者にインタビューを行ったり、こうした地道な取り組みの積み重ねによって、加古川の靴下をPRするアイデアを提案したのです。
STEAM教育導入における教師の負担は?
同校にとって、内閣府の政策コンテスト受賞の知らせは、STEAM教育における「課題解決能力の育成」という大きなゴールが達成された瞬間でもありました。この事例以外にも、生徒の提案が市の子育て支援サービスに採用されるなど、その成果は計り知れません。
同校で、STEAM教育を担当する福迫徳人先生は、2022年02月に寺子屋朝日のインタビューにこのようにコメントしています。
「STEAM教育にはロールモデルがなく、今は教員がテーマや教材を模索・探究しながら考えている。それらを通常の教員業務に加える形で実施するので、教員側の負担は決して軽くない。ただ講座を受けた生徒たちの反応も良く、実施する意義・やりがいを感じている」
STEAM教育導入には、やはり教師の負担が少なくないようです。しかしそんななか、生徒と教師の一丸となった挑戦が、実を結んだ事例といえるでしょう。
今後、ますます増えるニーズにこたえるため、経済産業省は「STEAMライブラリー」を開設しています。小学生、中学生、高等学校までの教師を対象にしたWebサイトで、授業で使用する動画やスライド、指導案、生徒向けワークシートなどを無料で使うことができます。
まとめ
- STEAM教育:
「科学」+「技術」+「工学」+「芸術・教養」+「数学」を横断的に学ぶ、次世代の教育メソッド。
近未来のIT人材の不足に備え、世界中で取り組みが行われている。 - 兵庫型STEAM教育とは:
・英語を加えた文理融合型
・生徒だけでなく、教師も本格的なIT研修を受講
・年間10回以上の特別授業を実施
以上、兵庫県のSTEAM教育の導入事例についてご紹介しました。
この先進的な教育プログラムは、国策として取り組む国も少なくありません。近未来のIT人材不足を想定すると、いますぐにでも取り組むべきといえそうですが、導入時の負担の多くが教師にのしかかるというのも事実です。
ICT教育を実践する上で、教育現場の教職員の負担を軽減する方策として、ヘルプデスクの活用という方法があります。
ヘルプデスクは、対面ではなく、メールや電話で対応します。日常のICT業務は多岐に渡るため、ちょっとした疑問も気軽に尋ねることができるのがメリットです。
ICT支援員とヘルプスクを併用する学校も少なくありません。
KDCのヘルプデスクには、ICT支援員やシステムエンジニアなどICTのプロフェッショナルが常勤しており、端末のトラブル対応からアプリの基本操作まで幅広く支援します。メールや電話のほか、遠隔サポートにも対応しています。
ICTのお困りごとは、ぜひ、KDCのヘルプデスクにご相談ください。
参照元
- 兵庫型STEAM教育について(文科省:PDF)
- 兵庫県立加古川東高等学校 学校通信(WEBページ)